民泊の本人確認で損しないための必須ルール5つ

法律・許可・行政

民泊を安全かつ合法的に運営するには、ゲストの本人確認が欠かせません。ただ、「どの身分証を確認すべきか」「非対面チェックインでも法律を守れるのか」「自治体ごとにルールは違うのか」など、迷う点も多いはずです。

この記事では、住宅宿泊事業法や各種条例を踏まえながら、本人確認の法的根拠、対面とICTそれぞれの手順、日本人・外国人別の確認方法、宿泊者名簿の作成・保管、eKYCの活用までを整理します。違法リスクやトラブルを避けつつ、効率よく民泊を運営するための実務的なポイントをまとめます。

民泊の本人確認はなぜ義務なのか|住宅宿泊事業法の根拠を理解する

民泊の本人確認はなぜ義務なのか|住宅宿泊事業法の根拠を理解する

住宅宿泊事業(いわゆる民泊)でゲストの本人確認や宿泊者名簿の作成・備付けが求められるのは、単なる慣習ではなく法律上の義務です。その背景には、犯罪防止や感染症対策など、事業者・ゲスト・地域社会を守る目的があります。

住宅宿泊事業法が定める本人確認義務の条文

民泊の本人確認義務は、住宅宿泊事業法(民泊新法)と、その枠組みを準用する旅館業法で定められています。条文構造を押さえると、「本人確認」と「宿泊者名簿」がセットで義務になる理由が分かりやすくなります。

まず住宅宿泊事業法第8条は、住宅宿泊事業者に宿泊者名簿の作成・備付け義務を課しています。

住宅宿泊事業法第8条第1項

住宅宿泊事業者は、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、その住宅宿泊事業を行う住宅ごとに、住宅宿泊サービスの提供に関する事項を記載した名簿を備え、これを保存しなければならない。

宿泊者名簿の具体的な記載事項(氏名、住所、職業、到着日・出発日、国籍など)や保存期間(3年間)は、同法施行規則および旅館業法施行規則で定められています。旅館業法では、本人確認と宿泊者名簿が実務上一体の仕組みとして扱われており、民泊も同じ考え方に立つ必要があります。

厚生労働省は旅館業法の解説で、本人確認の趣旨を次のように説明しています。

「旅館業法において、宿泊者名簿の備付け及び本人確認が義務付けられているのは、感染症の予防や犯罪捜査等の観点から、宿泊者を特定できるようにするためである。」(厚生労働省「旅館業における本人確認の徹底について」より)

住宅宿泊事業者には、旅館業者と同様に次の運用が求められます。

  • 宿泊者の氏名・住所・連絡先などを正確に把握する
  • 宿泊者名簿に記載し、所定期間保存する

その前提として、予約時やチェックイン時に適切な本人確認を行うことが不可欠になります。

さらに厚生労働省は、本人確認を怠る危険性について、次のように注意喚起しています。

「本人確認を適切に実施しないことにより、重大な犯罪の現場や犯罪者の潜伏場所となるおそれがある。」

「宿泊者名簿は、感染症の発生時における行動歴の把握や濃厚接触者の特定等、公衆衛生上の措置を講じるためにも重要である。」(いずれも厚生労働省「旅館業における本人確認の徹底について」より)

このように、本人確認と宿泊者名簿は「犯罪捜査」「感染症対策」という明確な目的を持つ仕組みです。単なる事務作業ではない点を理解しておく必要があります。

違法民泊との違い|本人確認を怠るリスク

本人確認義務を理解するには、合法民泊と違法民泊の違いを押さえると、行政が本人確認を重視する理由が見えてきます。

厚生労働省は「違法民泊対策について」で、違法民泊を次のように定義しています。

「民泊サービスを実施するためには、事業者は、旅館業法上の許可、住宅宿泊事業法の届出、国家戦略特区法上の認定のいずれかの手続をとらなければなりません。こうした手続きをせず行政の監督を受けずに無断で実施している民泊サービスは、違法民泊です。」(厚生労働省「違法民泊対策について」より)

行政の監督を受けない違法民泊では、次のような問題が起こりやすくなります。

  • 本人確認が行われていない、または形だけの運用になっている
  • 宿泊者名簿がなく、宿泊者の追跡が難しい
  • 防火・防災、衛生、近隣対応の体制が不十分

厚生労働省も違法民泊について、次のようなリスクを挙げています。

「違法民泊の場合は、例えば以下のような問題が発生する可能性がより高いと考えられます。
・衛生上の措置が講じられておらず、きちんと掃除されていない。
・犯罪や病気等の緊急事態が発生しても、事業者が駆けつける体制が整っていない。
・事業に対して近隣住民の理解が得られていないために、宿泊中に近隣住民から苦情を受ける。
・火災が発生しても、火災警報が鳴らない、消火器がない、避難口がわからない等により、初期消火や避難が遅れる危険性が高い。
・鍵が適切に管理されていないために、安心して宿泊できない。」(厚生労働省「違法民泊対策について」より)

本人確認をしない違法民泊は、次のような場になりやすくなります。

  • 反社会的勢力や犯罪グループの潜伏先
  • 詐欺や薬物犯罪の拠点
  • 感染症拡大時に行動履歴が追えない宿泊施設

こうした施設は地域の治安や公衆衛生を脅かす存在です。

一方で、旅館業法の許可や住宅宿泊事業法の届出を行った合法施設について、厚生労働省は次のように評価しています。

「旅館業法上の許可等を受けている合法物件は、保健所等の行政官庁の監督下にあるため、衛生管理や安全確保措置がきちんとなされています。」(厚生労働省「違法民泊対策について」より)

合法民泊として行政の監督を受けるということは、次の意味を持ちます。

  • 本人確認・宿泊者名簿の運用状況についても指導・監査を受ける可能性がある
  • 刑事事件や感染症発生時には、自治体・警察と連携して情報提供する責任を負う

その代わりに「安全性が確保された合法的な民泊」として、ゲストや地域から信頼を得やすくなります。

本人確認を怠ると、次のようなリスクが生じます。

  • 行政指導や業務停止命令などの対象になる可能性
  • 行政からの信用低下により監査・指導が厳しくなる可能性
  • 犯罪やトラブル発生時に「本人確認が不十分だった」として、社会的批判や損害賠償請求の対象となる可能性

単に罰則を避けるためではなく、事業リスク管理の中核として本人確認を位置づける必要があります。

旅館業法との比較で見る本人確認の位置づけ

民泊の本人確認義務をイメージしやすくするには、旅館・ホテルを規制する旅館業法との比較が役立ちます。住宅宿泊事業法は、本人確認や宿泊者名簿について旅館業法と同等の水準を求める設計になっています。

旅館業法は宿泊者名簿について、次のように定めています。

「営業者は、厚生労働省令で定めるところにより、宿泊者についてその氏名、住所、職業その他厚生労働省令で定める事項を記載した名簿を備えなければならない。」(旅館業法第6条第1項)

加えて、本人確認について厚生労働省は旅館業者向け通知で、次のように明記しています。

「宿泊者名簿の記載内容の正確性を確保する観点から、宿泊者の本人確認を確実に行うこと。また、外国人観光旅客については、旅券の提示を求め、その写しを保存すること。」(厚生労働省「旅館業における本人確認の徹底について」より)

住宅宿泊事業法はこの考え方を前提に、住宅を使った宿泊サービスにも同等の公衆衛生・治安水準を求めています。具体的には、次の義務を課しています。

  • 旅館業と同様の宿泊者名簿の備付け
  • それを前提とした本人確認の実施

旅館・ホテルと民泊では営業形態は違いますが、次の点は共通します。

  • 不特定多数の人を宿泊させる
  • ゲストの素性を把握しないまま出入りさせるとリスクが大きい
  • 感染症や犯罪発生時に「誰がいつ泊まっていたか」が分からないと、公的対応ができない

そのため、本人確認と宿泊者名簿という「最低限の安全装置」は、業態に関係なく必須とされています。

まとめると、民泊の本人確認義務には次の三つの側面があります。

  • 住宅宿泊事業法と旅館業法に根拠を持つ法的義務
  • 犯罪捜査・感染症対策という公的目的を持つ社会インフラ
  • 違法民泊と線引きし、合法民泊として信頼を得るための前提条件

本人確認を「チェックイン作業の一部」と捉えるのではなく、民泊事業の健全性と継続性を支える仕組みとして戦略的に設計することが重要です。

民泊の本人確認方法は2種類|対面とICT(非対面)の全手順

民泊の本人確認方法は2種類|対面とICT(非対面)の全手順

民泊での本人確認は、大きく分けて「対面」と「ICT(非対面)」の2パターンです。どちらの方法でも、住宅宿泊事業法や旅館業法の趣旨を踏まえた運用が求められます。そのため、まず「どこまでが法律上の必須ラインか」「どこからが任意の工夫か」を整理しておく必要があります。

観光庁は住宅宿泊事業者向けリーフレットなどで、本人確認の実務を次のように説明しています。

住宅宿泊事業法においては、宿泊者名簿の備付け及び外国人旅行者の本人確認に係る規定を設け、旅館業法と同等の措置を講ずることとしています。宿泊者名簿には、宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊日及び到着時間等を記載しなければなりません。また、外国人旅行者については、国籍及び旅券番号の記載に加え、旅券の写しを保存する必要があります。(観光庁「住宅宿泊事業に関するよくある質問」より)

つまり本人確認の目的は、次の二つに集約できます。

  • 宿泊者名簿の正確な記載
  • 外国人旅行者の旅券写しの保存

その目的を満たす手段として、「対面」か「ICT(非対面)」かを選ぶという考え方になります。

対面チェックインでの本人確認の流れ

対面による本人確認は、もっともオーソドックスで法令解釈上も分かりやすい方法です。宿泊業全体で広く採用されている手順であり、行政側も前提としている形です。

観光庁は旅館業法に関する通知で、フロント業務における本人確認について次のように述べています。

宿泊者名簿の記載事項の確認、本人確認は、原則としてフロントにおける対面により行うものとし、運転免許証、マイナンバーカード、旅券等の公的証明書により当該宿泊者であることを確認すること。(厚生労働省・観光庁連名通知「旅館業法の解釈運用について」より)

民泊の対面チェックインも、この考え方をそのまま踏襲する形になります。典型的な流れは次のとおりです。

  1. チェックイン場所の設定
    物件現地、近隣オフィス、提携ホテルのフロントなど、ゲストと対面できる場所を決めます。

  2. 予約情報との照合
    予約サイト上の「代表ゲスト名」「人数」「宿泊日」と、当日来訪者の情報を付き合わせます。明らかな違いがないかを確認します。

  3. 身分証の提示・目視確認
    日本人ゲストには運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証+補完書類などの公的身分証の提示を受け、写真・氏名・住所を目視で確認します。
    外国人旅行者の場合は、観光庁の示すとおり「旅券」の提示が必要です。

外国人旅行者で日本国内に住所を有しない者については、旅券を提示させ、その写しを保存しなければなりません。(観光庁「民泊制度ポータルサイト 住宅宿泊事業者向けQ&A」より)

  1. 宿泊者名簿への記入・記録
    宿泊者名簿に氏名・住所・職業・宿泊日・到着時間などを記入してもらいます。外国人旅行者については、国籍・旅券番号も必須です。

  2. 旅券写しの取得・保存(外国人旅行者)
    外国人旅行者については、旅券の顔写真ページをコピーまたはスキャンし、法定保存期間(住宅宿泊事業では3年間)保管します。観光庁は次のように求めています。

住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿及び旅券の写しを作成した日から3年間保存しなければなりません。(観光庁「住宅宿泊事業の概要」より)

  1. 鍵の受け渡し
    本人確認が完了したゲストに、物理鍵の受け渡しやスマートロックの暗証番号の案内を行います。

対面方式の最大の利点は、行政から見て運用状況がイメージしやすく、「不十分」と疑われにくい点にあります。

たとえば東京都豊島区は、家主不在型の住宅宿泊事業について、条例で次のようなルールを設けています。

家主不在型住宅宿泊事業においては、宿泊者のチェックイン時における対面による本人確認及び鍵の手渡しを行うこと。(豊島区「住宅宿泊事業の豊島区ルール」より)

このように、自治体によっては「対面でなければ不可」と明記している例もあります。非対面方式を検討する前に、物件所在地の条例・ガイドラインを必ず確認する必要があります。

ICTを活用した無人・非対面での本人確認の流れ

家主不在型や複数物件運営では、24時間の有人対応が難しい場合もあります。その場合、ICTを活用した非対面チェックインが有力な選択肢になります。

ただし「本人確認の水準が対面と同等であること」が前提です。「鍵をポストに入れておく」「暗証番号をメールで送るだけ」といった運用は、観光庁も問題視しています。

観光庁は住宅宿泊事業に関するQ&Aで、ICTによる本人確認を次のように整理しています。

ICTを活用した非対面による本人確認を行う場合であっても、運転免許証等の身分証明書又は旅券の写しの送付を受けるなどにより、当該宿泊者が本人であることを確認する必要があります。また、外国人旅行者で日本国内に住所を有しない者については、旅券を提示させ、その写しを保存する必要があります。(観光庁「住宅宿泊事業者向けQ&A 本人確認に関する問合せ」より)

この考え方に沿った非対面チェックインの一般的な流れは、次のとおりです。

  1. 事前案内・同意取得
    予約確定後にチェックイン方法を案内し、ゲストから「身分証画像の送信」または「ビデオ通話での確認」への同意を得ます。プライバシーポリシーと保存期間もあわせて明示しておくと、トラブルを防ぎやすくなります。

  2. 身分証・旅券画像の送信
    ゲストに専用アプリやクラウドストレージ、予約サイトのメッセージ機能などを通じて、運転免許証・マイナンバーカード・旅券の顔写真ページなどの画像を送ってもらいます。
    日本国内に住所を持たない外国人旅行者の場合は、観光庁の要請どおり、旅券写しを確実に受領する必要があります。

  3. 画像と予約情報の照合
    送付された画像の氏名・写真・番号と、予約情報・宿泊者名簿の記載内容を突き合わせます。なりすましや改ざんの疑いがないかを確認し、疑問点があれば次のビデオ通話で追加確認します。

  4. ビデオ通話等によるリアルタイム確認(推奨)
    観光庁はICT本人確認の具体例として、次の方法を挙げています。

ウェブ会議システム等を利用して、宿泊者と事業者が映像と音声で相互にやり取りを行いながら、旅券又は身分証明書を提示させ、その内容を確認する方法などが考えられます。(観光庁「住宅宿泊事業におけるICTの活用について」より)

この考え方を踏まえ、チェックイン当日にビデオ通話を行い、次の点を確認します。

  • 顔と身分証写真が同一人物か
  • 身分証の氏名と予約者名が一致しているか
  • 同行者の人数が予約内容と合っているか

こうした確認をリアルタイムで行うと、対面に近いレベルの本人確認に近づけます。

  1. 宿泊者名簿の作成・保存
    オンラインフォームやタブレット入力を通じて宿泊者名簿を作成し、法定期間保存します。外国人旅行者については前述のとおり、旅券写しも3年間保存する必要があります。

  2. 鍵情報の提供
    本人確認が完了したゲストに対してのみ、スマートロックの暗証番号やキーボックスのコードを送付します。番号は滞在ごとに変更し、第三者への転送を防ぐ運用が求められます。

ICT方式は運営効率の面で大きなメリットがあります。一方で、豊島区のように条例で対面チェックインを義務づける自治体もあります。観光庁も「ICTを用いる場合であっても、各自治体の条例に従う必要がある」と繰り返し注意喚起しています。導入前に必ず自治体のローカルルールを確認してください。

スマートロック・タブレット・ビデオ通話を使った具体的な実装例

本人確認フローを設計する際は、「法律・条例で求められる最低限」と「運営効率・ゲスト体験」の両立を目指します。ここでは、現場でよく採用される三つのパターンを紹介します。

  1. スマートロック+ビデオ通話方式(フル非対面型)
  2. 予約確定後、チェックイン予定時刻とビデオ通話の時間帯をヒアリングする
  3. 到着後、エントランス前などからスマホでビデオ通話に参加してもらう
  4. 画面越しに顔と身分証(または旅券)を提示してもらい、本人確認を行う
  5. 宿泊者名簿は事前にオンラインフォームで入力してもらい、当日は確認のみ実施
  6. 問題がなければ、その場でスマートロックの暗証番号を伝える

この方式は観光庁が例示する「ウェブ会議システムによる本人確認」に近い形です。対面に近い信頼性を確保しやすい構成です。

  1. タブレット端末+クラウド本人確認サービス(現地セルフチェックイン型)
  2. 物件エントランス付近にチェックインブースまたはタブレット端末を設置する
  3. ゲストは端末の案内に従い、身分証・旅券をカメラにかざして撮影する
  4. クラウド側で画像の真贋チェックや情報読み取りを行い、運営者に通知する
  5. 運営者は管理画面上で目視確認を行い、問題がなければスマートロックのコードを発行する

ホテルの無人チェックイン機に近い方式です。複数物件を一括管理したい事業者に向きます。ただし、端末の盗難・破損対策や、通信障害時のバックアップ手順を用意しておく必要があります。

  1. 対面+スマートロックのハイブリッド方式(条例対応型)
  2. 豊島区のように「対面による本人確認と鍵の手渡し」を求める自治体では、初回のみ対面チェックインを行う
  3. その場でスマートロックアプリへの登録・利用方法を案内する
  4. 2回目以降のリピーターについては、条例の範囲内でICTによる簡略化を検討し、必要に応じて自治体と事前協議する

条例上の対面義務を満たしつつ、将来の非対面運用への準備も進めるパターンです。

いずれのパターンでも共通して確認すべきポイントは次の三つです。

  • 観光庁が求める「宿泊者名簿の作成・保存」「外国人旅行者の旅券写し保存」を満たしているか
  • 自治体条例(例:豊島区の対面義務)と矛盾していないか
  • 通信障害やシステム不具合、本人確認不能時の代替フローを用意しているか

まずは物件所在地の一次情報(観光庁・自治体サイト・条例原文)を確認し、その範囲内で最も効率的なフローを設計することが重要です。

日本人ゲストの本人確認|必要な身分証明書と確認事項

日本人ゲストの本人確認|必要な身分証明書と確認事項

住宅宿泊事業では、日本人ゲストであっても「誰が・いつ・どこに泊まったか」を説明できる状態にしておく必要があります。これは法令順守だけでなく、トラブル防止のうえでも重要です。

そのためには、どの身分証を受け付けるか、どこまで情報を記録・保存すべきかを、一次情報に基づき整理しておく必要があります。

日本人ゲストに提示を求める身分証の種類一覧

前提として、住宅宿泊事業法も旅館業法と同様に「宿泊者名簿の作成・保存」を義務づけています。観光庁の「民泊制度ポータルサイト」では、住宅宿泊事業の概要を次のように説明しています。

住宅宿泊事業とは、住宅において宿泊料を受けて年間180日を超えない範囲で人を宿泊させる事業を言います。住宅宿泊事業を行うためには、住宅宿泊事業法に基づく届出が必要です。年間180日を超えて宿泊させる場合は、旅館業法に基づく許可が必要です。[民泊制度ポータルサイト・住宅宿泊事業とは]

この「宿泊させる事業」に、宿泊者名簿の作成義務が課されています。名簿作成だけなら自己申告情報でも形式上は足りますが、実務上は「本人確認書類による裏付け」がないと、なりすまし・犯罪利用・近隣トラブル時の警察照会などでリスクが高まります。

日本人ゲストに対して、一般的に本人確認書類として受け付けられるのは、次のような公的身分証です。

  • 運転免許証
  • 健康保険証(顔写真がないため、他の書類と組み合わせる運用が安全)
  • パスポート
  • 個人番号カード(マイナンバーカード)
  • 住民基本台帳カード(有効期限内)
  • 在留カード(日本国籍の家族と一緒に予約しているケースなどで扱う場合)

多くの自治体は、民泊事業者向け手引きやFAQの中で「本人確認に利用できる書類」を列挙しています。

広島県の「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」では、新着情報として次の説明があります。

令和3年9月 本人確認書類として「個人番号カード(マイナンバーカード)の写し」が追加されました。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」新着情報]

これにより、運転免許証やパスポートなどと並び、個人番号カードの写しが正式に「本人確認書類」として扱われることが示されています。このような自治体の一次情報を参照し、物件所在地のルールに合わせて受理する身分証の種類を決めておくことが重要です。

日本人ゲストについては、法律上「旅券の写し保存」が全国一律で義務づけられているわけではありません。ただし、犯罪収益移転防止やテロ対策、近隣トラブル時の責任追及の観点から、観光庁や自治体は一貫して「本人を確認したうえで名簿を作成・保存すること」を求めています。

そのため多くの自治体のガイドラインでは、日本人宿泊者に対しても、少なくともチェックイン時に次の運用を推奨しています。

  • 対面チェックイン:運転免許証かマイナンバーカードいずれか1点(必要に応じて保険証など補完書類)
  • 非対面チェックイン:写真付き身分証(免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)の画像提出+本人セルフィーでの一致確認

オンライン予約サイト(Airbnbなど)のアカウント認証だけでは、日本の法令上の「宿泊者名簿作成義務」を十分には満たしにくいと考えられます。事業者自身の責任で、法的要件に沿った本人確認フローを持っておく必要があります。

マイナンバーカードは使えるか|2021年改正後の取り扱い

マイナンバーカード(個人番号カード)については、「マイナンバーを扱うと違法になるのでは」と不安を抱く事業者もいます。ただし行政の一次情報を見ると、宿泊に関する本人確認書類としての扱いは整理されています。

広島県は前述のとおり、2021年(令和3年)9月に次のように公表しています。

本人確認書類として「個人番号カード(マイナンバーカード)の写し」が追加されました。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」新着情報]

住宅宿泊事業における本人確認書類の一つとして、マイナンバーカードを正式に認める内容です。これは観光庁の「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」改正を踏まえたもので、他の多くの自治体も同様の扱いを前提にしています。

実務でマイナンバーカードを用いる際は、次の点を押さえておくと運営リスクを抑えられます。

  • 事業者側が必要とするのは「氏名・住所・生年月日・顔写真」であり、個人番号(12桁の番号)は名簿には不要
  • カードのコピーや画像を保存する場合は、個人番号部分をマスキングするか、写り込まないように撮影する
  • 予約時の案内文や利用規約に、「本人確認にマイナンバーカードを使用する場合の取り扱い(番号部分は取得・保存しないなど)」を明記する

観光庁のガイドラインは、宿泊者名簿の作成・保存とあわせて、個人情報の適切な管理も求めています。広島県は「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が改正されました」として、次のように案内しています。

令和6年12月 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が改正されました。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」新着情報]

この中には、本人確認方法や宿泊者情報の取扱いに関する見直しも含まれます。マイナンバーカードを含む本人確認書類の扱いについては、観光庁のガイドライン原文と自治体の解説ページを定期的に確認し、運用ルールを更新していく必要があります。

確認した情報の記録方法と保管期間

日本人ゲストの本人確認を行ったあと、「どの情報をどの程度、どれくらいの期間残すか」を決める必要があります。これは、住宅宿泊事業法と旅館業法の枠組みを踏まえて考えます。

大分県は住宅宿泊事業の案内ページで、次のように説明しています。

これまで、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行う場合は、原則として、旅館業法による営業許可を取得する必要がありましたが、都道府県知事へ届出を行うことで、年間の宿泊提供日数が180日を超えない範囲で、住宅宿泊事業(民泊サービス)を行うことができます。[大分県「住宅宿泊事業法について」住宅宿泊事業法の概要]

住宅宿泊事業は旅館業と並ぶ「宿泊サービス」と位置づけられており、宿泊者名簿の作成・保存も同じ趣旨です。

旅館業法および観光庁ガイドラインを基準にすると、宿泊者名簿に記録すべき主な事項は次のとおりです。

  • 氏名
  • 住所
  • 職業
  • 宿泊日および到着時刻
  • 出発日および出発時刻(運用上は記録しておくと便利)
  • 連絡先(電話番号・メールアドレスなど:ガイドライン上推奨)

観光庁は、旅館業法における宿泊者名簿の保存期間について次のように説明しています。

宿泊者名簿は帳簿であり、作成の日から3年間保存しなければなりません。[厚生労働省「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」などで周知されている取扱い]

住宅宿泊事業についても、同様に「3年間の保存」が一般的な運用です。実務的には次のようなパターンが多く見られます。

  • 紙の宿泊者カードに自筆で記入してもらい、事業者がファイリングして3年間保管する
  • チェックインアプリやクラウド型PMSで名簿情報をデジタル保存し、バックアップも含めて3年以上保持する
  • オンライン本人確認で取得した身分証画像は、名簿情報と紐づけて暗号化保存し、保存期間満了後に確実に削除する

本人確認書類そのもののコピー(免許証やマイナンバーカードの画像など)について、「コピー保存が必須」とされているのは外国人旅行者の旅券のみです。日本人は、原則として名簿情報の保存で足ります。

ただし、トラブルが多いエリアや、高額物件・長期滞在などリスクが高い案件では、次のような方針をとる事業者もいます。

  • チェックイン時点で身分証の画像も取得し、保存期間を名簿と同じ3年にそろえる
  • 個人情報保護方針に「本人確認書類画像の取得・保存の目的・期間・削除方法」を明記する
  • 身分証画像へのアクセス権限を最小限の担当者に限定し、外部委託先とは秘密保持契約や個人情報保護条項を結ぶ

広島県は住宅宿泊事業者向け情報の中で、次のように繰り返し周知しています。

住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が改正されました。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」新着情報]

最新のガイドラインでは、名簿の電磁的管理や個人情報保護の観点が強調されています。日本人ゲストの本人確認についても、「どのように確認するか」だけでなく、「確認した情報をどのように記録・保管・削除するか」まで運営マニュアルとプライバシーポリシーに落とし込む必要があります。

外国人ゲストの本人確認|パスポート確認と旅券番号の記録手順

外国人ゲストの本人確認|パスポート確認と旅券番号の記録手順

住宅宿泊事業では、日本人ゲストに比べて、外国人ゲストにはより厳格な本人確認と記録義務が課されます。ここを誤ると、旅館業法・住宅宿泊事業法に基づく指導や行政処分の対象となる可能性があります。運用レベルまで具体的に整理しておくことが重要です。

外国人宿泊者に必要な確認事項(国籍・旅券番号)

前提として、旅館業法およびその解釈運用に基づき、宿泊施設の営業者は宿泊者名簿に「国籍」や「旅券番号」などを記載させる義務を負います。

厚生労働省は旅館業法の解説で、外国人宿泊者について次のように説明しています。

宿泊者のうち、日本国内に住所を有しない外国人については、その国籍及び旅券番号を宿泊者名簿に記載させることとされています(旅館業法第6条及び同施行規則第3条)。[厚生労働省「旅館業における適切な宿泊者名簿の作成・管理について」趣旨]

住宅宿泊事業(民泊)についても、国土交通省および観光庁の「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」で、旅館業法の考え方を基本的に踏まえることが明示されています。

各自治体もこの方針に沿って運用しており、広島県は住宅宿泊事業者向けの案内で次のように周知しています。

住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が改正されました。住宅宿泊事業者の皆様におかれましては、最新のガイドラインを確認の上、適切に宿泊者名簿の作成・管理を行ってください。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」新着情報]

実務上、外国人ゲストに対して最低限確認・記録すべき項目は次のとおりです。

  • 氏名(アルファベット表記)
  • 国籍
  • 住所(日本国内の滞在先住所を含む)
  • 職業
  • 旅券番号(パスポート番号)
  • 到着日・出発日
  • 前宿泊地・行先地 など

これらは紙の宿泊者名簿への記入、または予約システム・PMS上の名簿入力フォームを通じて取得します。ただし国籍と旅券番号については、自己申告ではなく実際のパスポート呈示を前提とする必要があります。

千葉県は旅館業者向け案内で、外国人宿泊者の取り扱いについて次のように記載しています。

日本国内に住所を有しない外国人が宿泊する場合には、国籍及び旅券番号の記載を受けるとともに、旅券の呈示を求め、その写しを作成しなければなりません。[千葉県「旅館業法における宿泊者名簿の記載事項について」]

住宅宿泊事業者も、同等の実務水準が求められると考えるべきです。外国人ゲストのチェックイン時には、オンライン・対面を問わず、必ずパスポートの現物確認と旅券番号の照合を行える体制を整えておきます。

パスポートの写しの保存義務と保管方法

外国人ゲストについては、国籍と旅券番号の記載だけでは足りません。「パスポートの写しの保存」まで義務づけられています。これは日本人ゲストとの大きな違いです。

先に引用した千葉県の案内は、次のように続きます。

旅券の写しは、宿泊者名簿とともに適切に保存する必要があります。保存期間は宿泊者名簿と同様、3年間です。[千葉県「旅館業法における宿泊者名簿の記載事項について」]

この「宿泊者名簿とともに保存」「3年間」という考え方は、国のガイドラインでも共通です。広島県も住宅宿泊事業者向け資料で、名簿の保存義務を次のように案内しています。

宿泊者名簿は、電磁的記録を含め3年間保存する必要があります。保存にあたっては、個人情報保護に十分配慮してください。[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の概要]

したがって外国人ゲストのパスポート写しも、宿泊者名簿と紐づけて3年間保存し、保存方法・アクセス権限・削除手順まで含めてルール化する必要があります。

具体的な保存方法のポイントは次のとおりです。

  1. 保存形式の選択
  2. 対面チェックインの場合:フロントや管理事務所でコピー機・スキャナを用いて紙またはPDFで保存する
  3. 非対面チェックインの場合:セルフチェックイン端末やスマートロック連携アプリで、ゲスト自身にパスポート写真ページを撮影・アップロードしてもらい、クラウド上に保存する

  4. 名簿との紐づけ

  5. 宿泊者名簿の「名簿番号」「予約番号」と、保存されたパスポート画像のファイル名・管理IDを一致させる
  6. システム導入の場合は、名簿レコードにパスポート画像へのリンクを持たせ、一元管理する

  7. アクセス制限と暗号化

  8. パスポート画像は重要な個人情報のため、閲覧権限を管理者・本人確認担当者に限定する
  9. クラウド保存では、通信の暗号化(https)と保存データの暗号化を確認する

  10. 保存期間経過後の削除

  11. 3年を経過した写しは、復元不能な形で削除するルールをマニュアル化する
  12. 紙の場合はシュレッダーなどで裁断し、再生できない状態にする

オンラインチェックインなどで事前にパスポート画像を取得する場合でも、チェックイン当日に本人と画像が一致しているか確認するプロセスを設けると、不正利用やなりすましの抑止になります。

外国人ゲストは個人情報保護への意識が高い場合も多いので、「なぜ写しが必要なのか」「どれくらい保存されるのか」を説明できるようにしておくことも大切です。

説明用の文言として、多言語の案内を用意しておくとスムーズに運営できます。例として次のような文言が考えられます。

  • 日本語:
    「日本の法律により、日本国内に住所のない外国人宿泊者については、国籍・旅券番号の記録とパスポートの写しの保存が義務付けられています。これらの情報は宿泊者名簿とともに3年間保存し、その後適切に削除します。」
  • 英語:
    “Under Japanese law, accommodation providers are required to record the nationality and passport number and keep a copy of the passport for guests who do not have an address in Japan. These records will be kept for three years together with the guest registry and then securely deleted.”

法的根拠と保存期間・利用目的を明示することで、ゲストの不安を軽減しつつ、本人確認と記録義務を確実に履行できます。

パスポート提示を拒否された場合の対応

実務では、外国人ゲストがパスポートの提示や写しの取得に難色を示すケースがあります。その場合の基本的なスタンスは、「法律に基づく義務であることを説明し、それでも提示が得られなければ宿泊を断ることができる」というものです。

千葉県は旅館業関係者向けに、外国人宿泊者のパスポート対応について次のように注意喚起しています。

旅券の呈示及び写しの作成に応じない場合には、宿泊を拒むことができます。[千葉県「旅館業法における宿泊者名簿の記載事項について」]

住宅宿泊事業者も、宿泊者名簿の作成と本人確認の義務を履行できない以上、無理に受け入れると事業者側が法令違反のリスクを負います。

したがって、次のような段階的対応をマニュアル化しておくとよいでしょう。

  1. 法的義務であることを丁寧に説明する
    先ほどの多言語案内を使い、「事業者の任意のお願いではなく、日本の法律で定められた義務である」ことを明確に伝えます。
    取得した写しの利用目的(本人確認・保健所等からの求めへの対応)と、保存期間・削除方法を具体的に説明します。

  2. 代替案の検討(可能な範囲で)
    ゲストが「写しの保存」に抵抗を示す場合、法令の範囲で可能な運用を検討します。ただし多くの自治体で「写しの作成・保存」が通知で明記されているため、独断で保存を省略する運用は避けます。

  3. それでも提示を拒否する場合の最終対応
    「法律に基づく義務であり、パスポートの提示と写しの作成に同意いただけない場合、宿泊をお受けできない」旨を冷静に伝えます。
    プラットフォーム経由の予約であれば、予約規約やハウスルールに事前にこの点を明記しておきます。

トラブルを避けるには、予約前からルールを明示しておくことが有効です。Airbnbなどのプラットフォームでは、ハウスルールや予約条件に次のような文言を掲載しておくとよいでしょう。

  • 日本語:
    「日本国内に住所をお持ちでない外国籍のゲスト様には、日本の法律に基づき、チェックイン時にパスポートのご提示と写しの取得にご協力いただきます。ご協力いただけない場合は、宿泊をお断りする場合がございます。」
  • 英語:
    “For guests who do not have an address in Japan, we are legally required to check your passport and keep a copy at check-in. If you do not agree to this, we may not be able to accommodate your stay.”

多言語でのコミュニケーションが難しい事業者は、自治体や観光協会が提供する多言語テンプレートやリーフレットを活用するとよいでしょう。観光庁や各都道府県のサイトには、多言語で宿泊者名簿や本人確認手続を説明した資料が公開されていることが多くあります。

たとえば広島県は住宅宿泊事業者向けに、国のガイドラインや関連資料へのリンクをまとめて案内し、次のように記載しています。

民泊(住宅宿泊事業法)の制度(民泊制度運営システムの操作・入力方法含む)等についてのご相談、ご意見、苦情等については、国が運営する「民泊制度コールセンター」にお問い合わせください。[広島県「民泊について(住宅宿泊事業法)」]

困ったケースが生じた場合は、このような公的な相談窓口や所管の保健所・担当課に相談し、自治体ごとの運用方針を確認しておくと安全です。

外国人ゲストの本人確認は、「法律だからやる」という発想だけでなく、「安全な宿泊環境を確保するために必要な手続き」であると位置づけることが大切です。ゲストにもその意義を伝えながら運用することで、トラブルを抑えつつ、コンプライアンス水準の高い民泊運営につなげられます。

宿泊者名簿の作成・保管・行政提出|5ステップで完全理解

宿泊者名簿の作成・保管・行政提出|5ステップで完全理解

宿泊者の本人確認を行ったら、その結果を「宿泊者名簿」に必ず反映させます。宿泊者名簿の整備は、住宅宿泊事業法だけでなく旅館業法でも基本中の基本です。本人確認とセットの義務と考えると分かりやすくなります。

ここでは各都道府県の一次情報を踏まえつつ、宿泊者名簿の実務を5ステップで整理します。

  1. 記載項目を正しく理解する
  2. 本人確認と紐づけて記入させる
  3. 名簿をどこに・どの形式で備え付けるか決める
  4. 3年間の保管体制を整える
  5. 行政・警察から求められたときに提出できるようにする

宿泊者名簿に記載すべき7つの項目

宿泊者名簿の記載内容は、法令と自治体の運用でほぼ共通です。千葉県・広島県・大分県などの案内でも、同じ項目が定められています。

千葉県の住宅宿泊事業ページでは、宿泊者名簿について次のように説明しています。

「住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿を備え、宿泊者ごとに、氏名、住所、職業、宿泊日、宿泊人数、外国人旅行者については国籍及び旅券番号等を記載しなければなりません。」[千葉県「民泊について(住宅宿泊事業法)」より要約]

大分県も同様に、住宅宿泊事業者の義務として次のように明記しています。

「宿泊者名簿には、宿泊者の氏名、住所、職業、宿泊日、宿泊人数、外国人旅行者については国籍及び旅券番号を記載し、3年間保存しなければなりません。」[大分県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」より要約]

これらを整理すると、名簿に記載すべき項目は実務上次の7つとなります。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 職業
  4. 宿泊日(到着日・出発日)
  5. 宿泊人数
  6. 国籍(外国人のみ)
  7. 旅券番号(外国人のみ)

これに加え、次のような補助情報を独自に追加しておくと、トラブル対応や税務・行政対応がスムーズになります。

  • チェックイン時刻・チェックアウト時刻
  • 予約番号(Airbnb などの予約ID)
  • 代表者か同伴者かの別
  • 本人確認に用いた書類の種別(運転免許証、旅券など)

広島県は住宅宿泊事業者向けに、国のガイドラインや様式へのリンクを案内し、次のように示しています。

「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)が改正されました。」[広島県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」]

名簿の記載様式で迷う場合は、国のガイドラインや自治体が公開しているひな型(様式集)を参照するとよいでしょう。

名簿の保存場所と3年間保管の義務

宿泊者名簿は作成して終わりではありません。「どこに」「どのくらいの期間」保存するかも法律で決まっています。各自治体の案内を総合すると、次の二点が重要です。

  • 届出住宅または事業者の営業所に備え付ける
  • 3年間保存する

大分県は住宅宿泊事業者の義務として、次のように示しています。

「宿泊者名簿を住宅宿泊事業を行う住宅または事業所に備え、記載後3年間保存しなければなりません。」[大分県「住宅宿泊事業(民泊)を行う皆様へ」より要約・強調引用者]

同様の趣旨は他県でも繰り返し示されています。千葉県も、宿泊者名簿について「事業を行う住宅等に備え付けること」「3年間保存すること」を義務として案内しています。

この規定を実務に落とし込むと、次のような運用が考えられます。

  • 家主居住型:
  • 物理的な名簿台帳を、自宅(届出住宅)の鍵付き棚に保管する
  • あわせてスキャンしてクラウドにバックアップする

  • 家主不在型・複数物件運営:

  • 物件ごとの名簿ファイルを用意しつつ、
  • 管理会社や本社事務所に「原本」または電子データを集中管理する

「備え付け」の解釈については、紙の台帳だけでなく、自治体によってはExcelやクラウドシステムなどの電子名簿も認めています。

広島県は民泊制度ポータルサイトや国のガイドラインへのリンクを示し、次のように案内しています。

「民泊(住宅宿泊事業法)の制度(民泊制度運営システムの操作・入力方法含む)等については、国が運営する『民泊制度コールセンター』にお問い合わせください。」[広島県「民泊について(住宅宿泊事業法)」]

電子保存を検討する事業者は、こうした公的窓口で自社の運用案が適切か確認しておくと安心です。

行政・警察への提出が求められるケースと対応

宿泊者名簿は事業者の内部資料にとどまりません。必要に応じて、行政機関・警察・消防などに提供することを前提としたものです。

千葉県の住宅宿泊事業ページでは、宿泊者名簿や届出情報の扱いについて次のように説明しています。

「住宅宿泊事業に関する届出情報等については、必要に応じて、警察、消防機関等の関係機関に提供することがあります。」[千葉県「民泊について(住宅宿泊事業法)」より要約]

実務上、行政・警察から宿泊者名簿の提出や閲覧を求められる主なケースは次のとおりです。

  • 立入検査や実地指導で名簿の整備状況を確認されたとき
  • 近隣からの苦情・通報を受け、利用実態の確認が必要になったとき
  • 犯罪・事故・火災などが発生し、該当日の宿泊者情報の確認が必要になったとき

このような場合に備え、日頃から次の点を意識して運用するとよいでしょう。

  1. 名簿の記載漏れを防ぐ
    氏名・住所・職業・宿泊日・宿泊人数・(外国人なら)国籍・旅券番号の7項目が埋まっているか、チェックイン時に必ず確認します。

  2. 本人確認資料と名簿の内容を突き合わせる
    パスポートや運転免許証の記載内容と名簿の記載に矛盾がないか、簡単に確認します。

  3. 提出方法をあらかじめ決めておく
    紙で保管している場合はコピー・スキャンの手順を、電子保存の場合はPDF出力やアクセス権限の管理方法を決めておきます。

  4. 個人情報保護の観点を押さえる
    宿泊者には、予約時またはチェックイン時に次の点を説明しておくと、後の誤解やクレームを避けやすくなります。

  5. 法令に基づき宿泊者名簿への記載が必要であること
  6. 必要に応じて行政機関・警察・消防などに提供される可能性があること

住宅宿泊事業法は、名簿整備を通じて「安全・安心な宿泊環境」の確保を目指しています。本人確認から宿泊者名簿への記載、適切な保管、行政・警察からの要請への対応までの流れを運営フローとして明文化し、スタッフや代行業者とも共有しておくことが、コンプライアンスリスクを抑えつつ、安定した民泊運営につながります。

eKYC・オンライン本人確認ツールで民泊運営を効率化する方法

eKYC・オンライン本人確認ツールで民泊運営を効率化する方法

eKYCとは何か|民泊への適用可否と法的根拠

eKYC(electronic Know Your Customer)は、スマホやPCから顔写真付き身分証の撮影や、自撮りとの照合により、オンラインで本人確認を行う仕組みの総称です。もともとは銀行などで、犯罪収益移転防止法に基づく本人確認方法として発展してきました。

民泊での本人確認について、住宅宿泊事業法そのものには細かな手段の規定はありません。ただし「宿泊者名簿の作成・保存」とセットで管理することが求められ、具体的な運用は各自治体のガイドラインが補完しています。

大分県が公開する「おおいたではじめよう!民泊事業のてびき」では、住宅宿泊事業の届出や運営のデジタル化の方向性が示されています。大分県は次のように説明しています。

住宅宿泊事業に係る届出は、『民泊制度運営システム』から行うことが原則となります。民泊制度運営システムは民泊制度ポータルサイトからアクセスし、手続を実施してください。(大分県「住宅宿泊事業法について」)

この「民泊制度運営システム」は、国土交通省・観光庁が運営するポータルサイトと連携し、事業者側の手続をオンライン化する前提で設計されています。

一次情報として、大分県の案内には次の記載もあります。

法令等を解説した『おおいたではじめよう!民泊事業のてびき』を作成しましたのでご活用ください。また、法令等の詳細は、以下の民泊ポータルサイト及び観光庁ホームページもご参照ください。(大分県「住宅宿泊事業法について」)

さらに、このてびきの中では、電子申請において「電子署名・電子証明書に代替できる身分証明書等の写しのアップロード」を認める旨が明記されています。これは、本人確認に関する資料を画像データなどで提出・保管することを制度上許容しているという意味を持ちます。

「身分証明書の写しのアップロードを認める」というスタンスは、民泊運営における本人確認でも、「紙の原本を目視するだけでなく、画像データや電子記録として保存・管理する方法」を許容する方向性と整合的です。

もちろん、すべての自治体が同一の解釈を採用しているとは限りません。「オンライン完結のeKYCだけで対面確認を完全に代替できるか」については、所轄自治体との事前確認が不可欠です。

ただし、国レベルで届出・制度運営にオンラインシステムが導入され、地方自治体レベルでも「電子署名の代わりに身分証写しアップロードを認める」運用が存在する以上、「オンラインで身分証の写しを取得・保存し、本人特定のために活用する」方向性は制度の流れと矛盾しないと考えられます。

まとめると、現状の法令・ガイドラインは「eKYCを名指しで認める」とまでは書いていませんが、次の点からeKYC活用の余地があると理解できます。

  • 民泊制度運営システムによるオンライン届出を原則化している
  • 電子署名の代替として身分証明書写しのアップロードを容認している

したがって実務上は、「eKYCツールで取得したデータを宿泊者名簿の一部として保管し、必要に応じて行政・警察に提示できる状態にする」ことを基本とし、細部の運用は自治体と個別に擦り合わせる形が現実的です。

民泊向けeKYCサービスの選び方と導入ポイント

民泊運営にeKYCを導入する目的は主に次の三つです。

  • 無人チェックインでも法令が求める本人確認と名簿作成を両立させる
  • 現地スタッフの負担を軽減し、24時間のチェックイン対応を自動化する
  • 身分証画像の保存・検索を効率化し、トラブル時の証拠を確保する

そのためeKYCサービスを選ぶ際には、本人確認精度だけでなく、「民泊の運営フローとの相性」を基準に考える必要があります。

民泊向けに検討したい主なチェックポイントは次のとおりです。

  1. 対応する本人確認書類の種類
    日本人ゲスト中心の場合は運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証などが中心になります。インバウンド比率が高い場合は、パスポート対応の有無が最重要です。
    住宅宿泊事業法の宿泊者名簿では「国籍および旅券番号」の記載が必要となるため、eKYC側でパスポートのMRZや旅券番号を自動取得・テキスト化できるサービスを選ぶと、名簿作成の自動化が進みます。

  2. 民泊プラットフォームや自社システムとの連携性
    Airbnbや各種PMS(Property Management System)、予約管理システムとAPI連携できるかどうかは、運用工数に直結します。
    理想は「予約が入る → チェックイン前に自動でeKYCリンクが送信される → 完了データがPMS側の予約情報に紐づく」という流れです。

  3. データ保存期間とエクスポート機能
    宿泊者名簿には一定期間の保存義務があり(原則3年間)、eKYCデータも同等以上の期間安全に保管する必要があります。サービス選定時には「保存期間」「削除ポリシー」「CSV・PDF出力の可否」などを確認し、行政や警察からの照会に即時対応できる形かどうかを検証します。

  4. セキュリティと個人情報保護への対応
    身分証画像や顔写真データは特にセンシティブな情報です。データ暗号化・アクセス権限の細分化・アクセスログの保存といった基本機能に加え、プライバシーポリシーや委託契約書で、事業者とeKYCベンダーの責任分界が明確になっているかを確認します。

  5. 料金体系とスケール性
    民泊はシーズンによる稼働変動が大きいため、1件あたり課金の従量制や、月額固定+従量のハイブリッドかでコスト構造が変わります。立ち上げ初期は低コストプランで様子を見つつ、物件数・稼働率が上がっても単価が下がる料金体系を選ぶと、長期的な採算が取りやすくなります。

導入時の実務的なポイントとしては、次の二つを押さえておくとよいでしょう。

  • 運営ルールと利用規約への明記
    予約サイトのハウスルールや宿泊約款に、「チェックイン前にオンライン本人確認(eKYC)をお願いする場合がある」「本人確認に応じない場合は宿泊をお断りすることがある」といった文言を明記しておきます。これにより、ゲストとのトラブルを予防しやすくなります。

  • 現場オペレーションとの二重化設計
    通信障害やゲスト側の操作ミスに備え、「eKYCが完了していない場合の当日対応フロー(現地での身分証撮影やビデオ通話での確認など)」も定めておきます。オンライン完結を目指しつつも、バックアップ手段を用意しておくことで、現場の負担を減らせます。

無人チェックインと本人確認を両立するシステム構成例

eKYCを最大限活用するには、「予約からチェックアウトまでの一連のフロー」に埋め込む設計が鍵になります。以下は、スマートロックとeKYCを組み合わせた無人チェックイン構成の一例です。

  1. 予約〜事前案内
  2. ゲストがAirbnbなどのプラットフォームや自社サイトから予約する
  3. 予約情報がPMS・予約管理システムに取り込まれる
  4. チェックイン数日前に、自動メッセージで「オンライン本人確認フォーム(eKYC)」と「宿泊者情報入力フォーム(名簿用)」のURLを送信する

  5. オンライン本人確認(eKYC)

  6. ゲストがスマホからフォームにアクセスし、身分証明書(パスポート・運転免許証など)を撮影する
  7. 自撮り写真または動画を撮影し、AIまたはオペレーター審査で本人同一性を確認する
  8. eKYCシステム側で「承認/否認」の判定結果と、身分証記載の氏名・住所・国籍・生年月日などをデータ化する

  9. 宿泊者名簿との連携

  10. eKYCで取得したデータと、ゲストが入力した宿泊者情報(同行者を含む)をPMS上で突き合わせる
  11. 不一致がないかを自動チェックし、問題がなければ「宿泊者名簿データ」として保存する
  12. 名簿データと身分証画像・認証ログを紐づけて保管し、行政・警察から求められた場合に提示できる状態にする

  13. スマートロックとの連携・チェックイン

  14. eKYC承認が完了した予約だけに、スマートロックの一時利用コード(またはモバイルキー)を自動発行する
  15. チェックイン日の指定時刻に合わせて、ゲストへ自動送信する
  16. ゲストは現地到着後、スタッフ不在でもスマートロックを使って入室する

  17. 滞在中〜チェックアウト後の管理

  18. 滞在中にトラブルや近隣クレームが発生した場合、予約情報から「eKYCの本人確認履歴」「宿泊者名簿」を呼び出して対応する
  19. チェックアウト後は、名簿データと本人確認記録を法定保存期間に従って保管し、期間経過後に適切に削除または匿名化する

このような構成により、フロント無人の民泊物件でも次の流れを自動化できます。

  • 宿泊前の本人確認をオンラインで完了させる
  • 宿泊者名簿を自動生成する
  • eKYCの結果に応じてスマートロックの鍵発行を制御する

大分県が示す一次情報のとおり、民泊制度運営システムによるオンライン届出を原則とし、「電子署名・電子証明書に代替できる身分証明書等の写しのアップロード」を認める方向性が打ち出されています。運営側が身分証の写しと名簿を電子的に紐づけて管理することは、この制度デジタル化の延長線上に位置づけられます。

最終的には所轄自治体の解釈や指導内容に沿った運用が前提です。それでもeKYCとスマートロックを組み合わせることで、「法令遵守」「無人運営」「オペレーション効率化」を同時に目指せます。

複数物件を運営する事業者にとっては、人的リソースに依存しない仕組みづくりとして、早い段階から検討する価値が高い領域です。

自治体ごとに異なる本人確認ルール|条例・独自規制の確認方法

自治体ごとに異なる本人確認ルール|条例・独自規制の確認方法

住宅宿泊事業法は全国共通の「最低ライン」を定める法律ですが、実務の本人確認ルールは自治体ごとの条例・要綱によって大きく変わります。

観光庁の「民泊制度ポータルサイト」では、事業者に対して次のように注意喚起しています。

住宅宿泊事業法は『都道府県等が定める条例により、事業を実施する区域と期間が制限される場合があります』

長野県も同文を引用し、この点を解説しています。本人確認の方法や対面義務についても、条例やガイドラインで上乗せ規制をかける自治体が増えています。

ここでは代表事例と、効率的な確認方法を整理します。

豊島区「対面確認+鍵の手渡し」義務など自治体独自ルールの事例

東京都豊島区は、家主不在型民泊に対して国基準より厳しい運用をとる自治体の一つです。豊島区の住宅宿泊事業条例では、家主不在型の必須要件として「対面による本人確認」と「鍵の手渡し」が明記されています。無人チェックイン機+スマートロックだけの運用は事実上認められていません。

観光庁のガイドラインは、本人確認について「パスポートなどの写しの提出」や「オンラインでの本人確認」も例示しています。一方で豊島区は条例で次のような趣旨の規定を設けています。

家主不在型住宅宿泊事業においては、宿泊者の到着時に対面により本人確認を行い、鍵を手渡しすること

ITを使った完全無人運営に歯止めをかける設計といえます。背景には、住宅宿泊事業法が求める衛生・安全確保義務に加え、騒音・ゴミ出し・近隣トラブルなど生活環境の悪化への懸念があります。

長野県や滋賀県、千葉県なども、それぞれの地域事情を踏まえた独自条例・ガイドラインを整備しています。たとえば長野県は「長野県住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例」を制定し、公式ページで次のように説明しています。

長野県では、住宅宿泊事業に起因する生活環境の悪化を防止するため、住宅宿泊事業法第18条の規定により、『長野県住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例』を制定しています。

条例本文では、事業実施の制限区域・期間や管理者の義務が定められており、「家主不在型はこの地域では難しい」「この期間は営業不可」といった制約が生じるケースもあります。

条例で強化されている地域の確認方法|民泊制度運営システムの活用

自治体ごとの独自ルールを一つ一つ探すのは手間がかかります。そこでまず、国土交通省・観光庁が運営する「民泊制度ポータルサイト」と「民泊制度運営システム」を入口に使うと効率的です。

大分県は住宅宿泊事業者向けページで、次のように案内しています。

住宅宿泊事業に係る届出は、『民泊制度運営システム』から行うことが原則となります。民泊制度運営システムは民泊制度ポータルサイトからアクセスし、手続を実施してください。

さらに、大分県が作成した手引き「おおいたではじめよう!民泊事業のてびき」では、このシステムを利用した届出時の本人確認として、次の運用を詳述しています。

電子署名・電子証明書に代替できる身分証明書等の写しのアップロード

これは事業者本人の届出における身元確認の話ですが、「公的手続において、電子署名の代わりに身分証の画像データをオンラインで提出する」ことが国・自治体双方で前提になっていることを示すものです。

この流れは、宿泊者本人確認のデジタル化にもつながります。民泊制度ポータルサイトには、各都道府県・政令市・中核市などの担当部署とローカルルールへのリンクが整理されています。

おおまかな確認手順は次のとおりです。

  1. 民泊制度ポータルサイトにアクセスする
  2. 物件所在地の自治体を選択する
  3. 住宅宿泊事業(民泊)に関するページ内の「条例」「ガイドライン」「Q&A」などを確認する

長野県のように公式ページで次のように注意喚起している自治体は、本人確認や管理体制にも上乗せルールを定めていることが多いと考えられます。

都道府県等が定める条例により、事業を実施する区域と期間が制限される場合があります。

条例本文と解説資料まで、必ず目を通しておく必要があります。

届出前に必ず確認すべき自治体窓口と相談の流れ

最終的な解釈権限は各自治体にあります。無人チェックインやeKYCを導入する前に、所轄窓口と直接すり合わせを行うことが不可欠です。

長野県は届出先を次のように明示しています。

事業を行おうとする施設の所在地を所管する保健福祉事務所長。ただし、長野市内で事業を行う場合は長野市保健所長、松本市内で事業を行う場合は松本市保健所長

窓口が県本庁か保健所か、市の生活衛生課かで担当部署が分かれる点にも注意が必要です。

実務的には、届出前に次の流れで確認するとよいでしょう。

  1. 民泊制度ポータルサイトから対象自治体の民泊ページへアクセスする
    → 住宅宿泊事業の担当課名・電話番号・メールアドレスを確認します。

  2. 自治体サイトで住宅宿泊事業に関する条例・規則・要綱をダウンロードする
    → 「住宅宿泊事業の適正な実施に関する条例」「民泊ガイドライン」などの名称で公開されている場合が多いです。

  3. 本人確認と鍵の受け渡しに関する条文・Q&Aを読み込む
    → 「対面確認」「鍵の手渡し」「管理者の巡回・常駐」などのキーワードをチェックします。

  4. 窓口に電話・メールで事前相談する
    → 想定している運営形態(家主居住型/不在型)、チェックイン方法(無人/対面/遠隔)、eKYCやスマートロックの利用有無を具体的に説明し、法令・条例上許容されるかを確認します。

  5. 指導内容をメモ・メールで保存し、運営マニュアルに反映する
    → 将来の指導・監査時に、自治体との事前協議内容を示せるようにしておきます。

観光庁は民泊制度ポータルサイトで、住宅宿泊事業法の概要として次のように説明しています。

住宅宿泊事業者には、宿泊者に対する衛生や安全の確保などが義務付けられています。

長野県も同趣旨を引用しています。ただし「どこまでを本人確認の厳格化として求めるか」は自治体裁量に委ねられています。

豊島区のように条例で対面確認を義務づける自治体もあれば、大分県のようにオンライン手続きを前提とし、電子署名の代わりに身分証写しアップロードを認めるなど、デジタル化を進める自治体もあります。

このため、同じ「民泊 本人確認 方法」でも、許容される運用は所在地によって大きく異なります。物件選定やシステム投資の前に、民泊制度ポータルサイトと自治体窓口を併用し、条例・ガイドライン・運用解釈を必ず確認しておく必要があります。

本人確認における注意点とトラブル回避策|よくある失敗と対処法

本人確認における注意点とトラブル回避策|よくある失敗と対処法

本人確認は「チェックイン業務の一部」ではなく、「法令遵守とリスク管理の要」です。

厚生労働省は旅館業の指導通知で、宿泊者名簿について次のように述べています。

宿泊者名簿は、感染症のまん延防止の観点のみならず、犯罪捜査の基礎資料とする観点からもきわめて重要なものであることから、適切に作成されなければならない

これは実質的に「本人確認を怠ると、犯罪や感染症対策の穴になり得る」という警告です。この前提を踏まえ、民泊運営で起こりやすい失敗と回避策を整理します。

代表者のみ確認でよいか|全員確認の原則と例外

複数名のグループ予約で「代表者だけ身分証を確認すればよいか」という疑問はよく出ます。一次情報をたどると、原則は「宿泊者全員の把握」が求められています。

たとえば千葉県は旅館業の宿泊者名簿について、次のように明示しています。

宿泊者名簿には、宿泊者全員を記載してください

[千葉県健康福祉部生活衛生課「旅館業営業者向けQ&A」より]

広島県も同様に、「宿泊者全員の氏名等の記載」を求める運用を示しています(広島県生活衛生課旅館業関係資料)。観光庁の民泊制度ポータルでも、住宅宿泊事業者の義務として次が掲げられています。

宿泊者名簿の備付け及び保存

[観光庁「民泊制度ポータルサイト」住宅宿泊事業者の義務]

こうした情報から、実務上は「宿泊者全員の名簿情報を取得すること」が求められていると理解するのが自然です。

したがって次のようなスタンスが安全です。

  • 原則:宿泊者全員の氏名・住所・職業・国籍など名簿記載事項を取得する
  • 身分証の現物確認:少なくとも代表者+リスクが高いと判断した同伴者の身分証画像提出または対面確認を実施する
  • 例外:家族旅行など明らかに一体として行動し、トラブルリスクが低いケースでは、代表者の厳格な本人確認+全員の名簿記載で対応する

厚労省通知は外国人宿泊者について、次のように求めています。

氏名、国籍、旅券番号等について正確に記載させること

代表者だけパスポートを確認し、他の外国人同伴者はノーチェックという運用は推奨できません。特に都市部や繁華街エリアでは、「外国人宿泊者全員のパスポート確認」をルール化しておくと安全性が高まります。

ゲストのスマホで確認した場合の注意点

対面チェックインの現場では、「ゲストのスマホ画面に表示された身分証画像」を見て確認してよいか、という質問もあります。

一次情報は「スマホ画面での確認可否」には直接触れていませんが、厚労省は本人確認について次のように述べています。

宿泊者が真に本人であることを確認することが重要

そのために旅券などの提示を求める、としています(厚労省「旅館業法の解釈に関するQ&A」)。この趣旨から、スマホ画面確認には次のようなリスクがあります。

  • 加工画像・スクリーンショットの可能性がある
  • 画面の一部のみ表示され、券面全体の真正性を確認しづらい
  • キャッシュ画像や別人の身分証画像の転用の可能性がある

スマホ画面での確認を採用する場合は、少なくとも次のルールが必要です。

  • 券面全体が見えるように表示してもらう(氏名部分のみ拡大では不可)
  • 対面なら本人の顔と写真を照合し、オンラインならビデオ通話で顔と画面上の写真を比較する
  • 事前にアップロードされた身分証画像を保管し、当日のスマホ提示内容と突き合わせる

また、観光庁と厚労省はいずれも「本人確認書類の写し保存」を日本人に義務付けてはいません。必須なのは宿泊者名簿の作成・保存です。

そのため、スマホ画面だけを見て名簿記載も不十分、記録も残さないという運用は避けるべきです。本人確認の証跡が残らず、トラブル時に「確認した」と主張しにくくなります。

スマホ画面活用は補助的な手段と捉え、可能なら次のような厳格化を組み合わせます。

  • eKYCサービスを使い、端末上で自動の真贋判定と顔照合を行う
  • 券面画像を安全なストレージに暗号化保管し、名簿情報と紐づける

本人確認書類の不正・偽造を疑った場合の対応手順

本人確認を行う以上、「怪しい」と感じるケースは避けられません。その際の対応は、厚労省や自治体の指針を根拠に、事前にマニュアル化しておく必要があります。

厚労省は違法民泊対策のリーフレットで、無許可民泊の問題点を次のように指摘しています。

犯罪や病気等の緊急事態が発生しても、事業者が駆けつける体制が整っていない

[厚労省「違法民泊はやめましょう」]

一方、合法物件では行政の監督下で安全確保が図られていると説明しています。これは、「本人確認や名簿管理を適切に行わないと、安全確保責任を果たせない」というメッセージでもあります。

不正・偽造の疑いがある場合のステップは、次のとおりです。

  1. 追加確認の実施(ソフトな再確認)
  2. 券面の拡大表示や別角度からの撮影を依頼する
  3. 住所や生年月日を口頭で確認し、券面記載と一致しているかチェックする
  4. 予約情報(氏名・住所・電話番号)と身分証の内容が一致しているか照合する

  5. 疑義が強い場合は別の身分証の提示を依頼する

  6. パスポートと運転免許証の両方を提示してもらう
  7. クレジットカード名義や電話番号のSMS認証など、追加の要素で裏付けを取る

  8. 解消しない場合は宿泊をお断りできることを説明する
    旅館業法第5条は、営業者に「宿泊を拒むことができる事由」を規定しています。厚労省通知は次のように解釈しています。

宿泊者が正確な宿泊者名簿の記載を拒むなど、営業者の業務遂行に支障がある場合には、宿泊を拒否し得る

[厚労省「旅館業法の解釈に関するQ&A」]

本人確認書類の真正性に重大な疑義がある場合、「名簿の正確な記載が確保できない」「安全確保義務を果たせない」として、宿泊拒否の合理的理由になり得ます。

  1. 犯罪性が強く疑われる場合は警察に相談する
    偽造身分証の提示は犯罪に該当する可能性があります。フロントや運営代行担当者の判断で抱え込まず、警察署の生活安全課などに連絡し、指示を仰ぐ体制を整えます。

運営マニュアルでは次の点を明記しておくと、現場の迷いを減らせます。

  • 不審と判断する具体的なポイント(写真と実物の違和感、フォントや加工跡、期限切れなど)
  • 追加確認で取るべき行動のチェックリスト
  • 宿泊拒否の決定権者(オーナー・管理会社)の連絡先

よくある質問(FAQ)まとめ

一次情報と現場の実情を踏まえ、「民泊 本人確認 方法」で問合せが多いポイントをQ&A形式で整理します。

Q1. 代表者だけ身分証を確認すればよいか?
A. 宿泊者名簿は「宿泊者全員」を対象とする運用が各県通知で示されています(千葉県・広島県など)。少なくとも全員の氏名などを把握することが原則です。身分証の現物確認についても、リスクが高いと判断したゲストには代表者以外にも範囲を広げたほうが安全です。

Q2. ゲストが自分のスマホで表示した身分証画像だけで確認してよいか?
A. 法令で「スマホ画面が不可」とまでは明記されていませんが、厚労省は「真に本人であることの確認」を求めています。加工・別人画像のリスクを踏まえると、スマホ画面のみでの判断は危険です。券面全体の表示、顔との照合、事前アップロードとの突き合わせなど、補完策を組み合わせるべきです。

Q3. 外国人がパスポート提示を拒否した場合はどうするか?
A. 厚労省通知は、外国人宿泊者について「国籍および旅券番号の記載」を求めています。パスポート提示を拒む場合は名簿の正確な記載が確保できないため、旅館業法5条に基づき宿泊を拒否し得ると解釈されています。事前に利用規約やハウスルールで、パスポート提示がなければ宿泊を受けられない旨を明記しておくと、現場トラブルを減らせます。

Q4. 本人確認をしなかった場合、どのようなリスクがあるか?
A. 厚労省は宿泊者名簿を「感染症のまん延防止」「犯罪捜査の基礎資料」と位置づけています。本人確認が不十分だと、感染症発生時の追跡や警察からの照会に応じられなくなります。指導・監査で「名簿が形骸化している」と判断されれば、行政指導や営業停止リスクもあります。短期的な手間よりも、長期的なリスク低減効果を重視して運用ルールを設計する必要があります。

これらのFAQに共通する結論は、「本人確認はミニマム対応ではなく、一次情報の趣旨を踏まえて一段階厳格に設計する」ことです。その結果としてトラブルとリスクを最小化し、合法的で持続可能な民泊運営につなげることができます。

まとめ

民泊の本人確認は、住宅宿泊事業法・旅館業法に基づく義務です。違反すれば、行政指導や営業停止などのリスクにつながります。

本記事では、日本人・外国人それぞれに必要な書類、宿泊者名簿の作成・保管のポイント、eKYCや無人チェックインの具体的活用方法、自治体独自ルールへの対応やトラブル事例まで整理しました。

まずは自施設の運用フローを、この記事のチェックポイントと照らし合わせて確認してください。抜けや曖昧な部分を一つずつ是正していくことが、安全で長期的な民泊事業の近道になります。