民泊宿泊者名簿の書き方は?違反しない7つの必須ルール

法律・許可・行政

民泊の宿泊者名簿は「なんとなく書いてもらって保存しておけばよい書類」ではありません。法律で項目や保存方法まで細かく決められた義務です。氏名や住所の書き方を誤ったり、外国人宿泊者の旅券番号を記録していなかったりすると、指導や業務停止命令などにつながり、事業継続に影響が出ます。

この記事では、住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊の違い、具体的な記入例、電子宿泊者名簿や定期報告との関係、よくあるミスと対策を整理し、実務で迷わない宿泊者名簿の書き方を解説します。

民泊の宿泊者名簿とは?法律上の位置づけと義務の全体像

民泊の宿泊者名簿とは?法律上の位置づけと義務の全体像

民泊でいう「宿泊者名簿」とは、宿泊したゲストの氏名・住所・職業・滞在日などを記録し、一定期間保管することが法律で義務づけられている帳簿を指します。単なる「チェックインシート」ではなく、住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊(国家戦略特区法)それぞれの制度の中で根拠条文がある法定帳簿という扱いです。

住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊それぞれの根拠条文

住宅宿泊事業(いわゆる新法民泊)では、宿泊者名簿の義務が住宅宿泊事業法第8条に明記されています。同条1項で、住宅宿泊事業者に対し、宿泊者の氏名や住所などの事項を記載した宿泊者名簿を備え付け、保存する義務があると定めています(条文要旨)。

国土交通省・観光庁の「民泊制度ポータルサイト」では、住宅宿泊事業者向けに公式の「電子宿泊者名簿」ソフトを無償提供しており、次のように説明しています。

「民泊制度運営システムでは、電子宿泊者名簿(住宅宿泊事業者向けのソフトウェア)の配布を行っています。住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます。」(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」)

同ページでは、電子宿泊者名簿で扱う項目として、宿泊開始日・終了日や開始時刻・終了時刻、宿泊日数、宿泊者の種別(代表者/同行者)などを一覧で示しています。住宅宿泊事業法第8条および関係省令で定められた名簿記載事項をソフトに落とし込んだもので、「どこまで記録すべきか」の実務的な目安として使えます。

旅館業法の下で運営する簡易宿所型民泊(ゲストハウス等)では、旅館業法第6条が宿泊者名簿の根拠条文です。同条で、営業者は氏名・住所・職業・到着日・出発日などの記載事項を備え付けるべきことが定められています。観光庁の通知や各自治体の要綱で、名簿様式や保存期間(通常3年間)が具体化されています。

特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)についても、国家戦略特区法と、それに基づく政令・条例で宿泊者名簿の作成義務が定められています。自治体の案内ページでは、旅館業法と同等の項目(氏名・住所・職業・滞在期間など)を記載した名簿を作成・保存するよう求めています。制度ごとに条文は異なりますが、「誰がいつどこにどれだけ滞在したか」を把握できる程度の情報を記録するという趣旨は共通です。

宿泊者名簿の備付けが義務化された背景(テロ対策・感染症対策)

宿泊者名簿が厳格に義務づけられている背景には、テロ対策と感染症対策という2つの目的があります。2000年代以降の国際テロの顕在化や、新型インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の流行を受け、「誰がどこに宿泊しているか」を公的に把握できる仕組みの重要性が高まりました。

都道府県や政令市の民泊解説ページでも、この点を明示している例が多くあります。大阪府などの説明では、宿泊者名簿について、テロ防止・感染症まん延防止の観点から、警察や保健所などの関係機関が必要時に迅速に宿泊者情報を把握できるようにする趣旨が繰り返し示されています(各自治体「民泊について(住宅宿泊事業法)」等)。

国土交通省・観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、住宅宿泊事業者に対し、法定の名簿を電子的に記録・保存し、二か月ごとに宿泊実績データを報告できるよう「民泊制度運営システム」を整備しています。これは事業者の事務負担軽減だけでなく、感染症流行時などに宿泊実態を統計的・追跡的に把握する目的もあると考えられます。

「住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます。」(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」)

このように、宿泊者名簿は税務管理や事業者の記録だけでなく、治安維持と公衆衛生行政の基盤として機能することを想定しています。そのため、本人確認の徹底(特に日本国内に住所を持たない外国人の旅券確認)や、正確な記載・保存が強く求められます。

違反した場合のペナルティ(業務停止命令・廃止命令)

宿泊者名簿の備付けや記載事項は、努力義務ではありません。違反すると行政処分や罰則の対象になります。住宅宿泊事業法では、第15条および第16条に基づき、所轄行政庁は違反がある場合に業務改善命令や業務停止命令、最終的には廃止命令を出せる仕組みです。

住宅宿泊事業法第15条では、住宅宿泊事業者が法令違反を行った場合、所管行政庁が報告や資料提出を求め、改善が見られない場合は業務改善命令を出せると定めています。さらに第16条では、業務改善命令に従わないなど重大な違反があるとき、一定期間の業務停止や事業の廃止を命じることができるとされています。罰金だけでなく、事業継続そのものが危うくなるリスクが条文で明確になっています(条文要旨)。

旅館業法や特区民泊でも同様に、帳簿の備付け義務違反は指導・改善命令・営業停止・許可取消しなどの行政処分の対象になり得ます。実務上は、宿泊者名簿の未整備や虚偽記載・保存期間前の廃棄が、他の違反(無届営業、衛生基準違反など)と合わせて重く評価される例が多いです。

民泊事業者にとって、宿泊者名簿は「プラットフォームの予約情報があるから不要」と誤解されがちです。しかし、法令に沿った形式と内容で備え付け、所管行政庁からの立入検査や報告徴収にすぐ対応できる状態にしておかなければ、行政処分のリスクが高まります。住宅宿泊事業法の届出番号を持つ事業者には、国公式の電子宿泊者名簿が提供されています。これを利用して法令要件を満たしておくことは、コンプライアンスとリスク管理の観点から現実的な選択といえます。

【制度別】宿泊者名簿の記載事項一覧と書き方の違い

【制度別】宿泊者名簿の記載事項一覧と書き方の違い

民泊の宿泊者名簿は、どの法律(制度)で運営しているかによって書くべき項目が変わります。まず自分の物件がどの制度に該当するか整理する必要があります。

制度ごとの必須項目は、観光庁や自治体が公表している一次情報を基に確認します。特に大阪府は、令和5年12月13日施行の旅館業法改正を踏まえ、住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊を横断して整理した資料を公表しています。実務上の参考として役立つ内容です(大阪府公式資料・要旨)。

ここでは制度別に必須項目と書き方のポイントを整理し、最後に比較表でまとめます。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の記載必須項目:氏名・住所・職業・宿泊日

住宅宿泊事業法に基づく「民泊新法」の事業者は、宿泊者名簿について、観光庁運営の「民泊制度ポータルサイト」が提供する電子宿泊者名簿ソフトの仕様を参考にすると、法令上求められる情報を漏れなく把握できます。

民泊制度ポータルサイトでは、電子宿泊者名簿で作成できる名簿の内容として、次のような項目を挙げています。

「宿泊開始日」「宿泊開始日の開始時刻」「宿泊終了日」「宿泊終了日の終了時刻」「宿泊日数」「種別(宿泊者の種別(代表者または同行者))」「グループ識別」等を記録できるとされている(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」より要約)。

電子宿泊者名簿はソフトの仕様説明ですが、ここで示されている「宿泊開始日・終了日・宿泊日数」は、住宅宿泊事業法における宿泊者名簿の「宿泊日(宿泊の年月日)」に対応すると考えられます。同サイトではこの名簿で住宅宿泊事業法が定める項目を扱うと明示しています。法令要件を満たす具体的なイメージとして利用しやすい内容です。

住宅宿泊事業法で特徴的なのは次の点です(大阪府の制度比較資料の要旨も踏まえて整理)。

  • 氏名:宿泊者本人の氏名
  • 住所:現在の居住住所
  • 職業:会社員・自営業・学生・無職など
  • 宿泊日:宿泊開始日(チェックイン日)と終了日、または宿泊期間

書き方としては、代表者と同行者を区別し、それぞれの氏名・住所・職業を記録する運用が望ましいといえます。民泊制度ポータルサイトの電子宿泊者名簿では、

「宿泊者の種別(代表者または同行者)」

を入力する仕様になっています(同サイトより要約)。実務でもこの区分に従って記入しておくと、後の照会やトラブル対応時に管理しやすくなります。

住宅宿泊事業者には二ヶ月ごとの宿泊実績定期報告の義務があります。同じ電子宿泊者名簿から「宿泊実績定期報告データ」を作成できるとされているため、名簿の書き方をこのフォーマットに合わせておくと報告業務もスムーズです(民泊制度ポータルサイトの説明より要旨)。

旅館業法の記載必須項目:氏名・住所・連絡先(令和5年12月改正後)

旅館業法に基づき簡易宿所や旅館・ホテルとして運営している場合、宿泊者名簿の必須項目は住宅宿泊事業法とは一部異なります。令和5年12月13日施行の改正で、「宿泊者の連絡先」に関する規定が新設されました。この点を押さえておく必要があります。

大阪府はこの改正を踏まえ旅館業法の宿泊者名簿項目を整理しています。改正後の旅館業法では、少なくとも以下の事項を記載する必要があると要約できます(大阪府公式資料・要旨)。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先(電話番号やメールアドレスなど連絡可能な情報)
  • 宿泊年月日

改正のポイントは「連絡先」が明示的に義務付けられた点です。大阪府の整理では、旅館業法の宿泊者名簿の記載事項として、従来からの氏名・住所・宿泊年月日に加え、「連絡先」の欄を設けるべきと説明しています(内容要約)。

書き方の実務ポイントは次のとおりです。

  • 氏名:旅券や予約情報と整合するローマ字表記も併記すると外国人宿泊者の確認がしやすい
  • 住所:国内居住者は都道府県から、海外居住者は国名+都市名を基本に記入してもらう
  • 連絡先:携帯電話番号とメールアドレスの両方の欄を設け、少なくともどちらか一方を記入してもらう
  • 宿泊年月日:チェックイン日・チェックアウト日を別欄で記載し、必要に応じて泊数も算出する

改正後は、保健所などの立入検査で、連絡先欄がない、または空欄が目立つ状態を指摘される可能性があります。帳票フォーマットの更新と、フロントでの記入案内を早めに整えることが大切です。

特区民泊の記載必須項目:氏名・住所・連絡先・滞在期間

国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」の場合も、宿泊者名簿の必須項目は住宅宿泊事業法・旅館業法と少し異なります。大阪府の制度比較によると、特区民泊で求められる宿泊者名簿の主な項目は次のとおりです(大阪府資料・要旨)。

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 滞在期間

特徴は、「連絡先」が旅館業法と同様に必須とされていることに加え、「滞在期間」の記録が求められる点です。特区民泊は条例で最低宿泊日数を定めていることが多くあります(例:2泊3日以上など)。

実際に何泊したかを確認できる「滞在期間」の記録は、中長期滞在との整合性を確認するうえで重要になります。

書き方のポイントは次のとおりです。

  • 氏名・住所:代表者と同行者を分け、全員分を把握できる欄を用意する
  • 連絡先:代表者の電話番号・メールアドレスを必須とし、同行者は任意とする運用が一般的
  • 滞在期間:チェックイン日・チェックアウト日を明示し、システム上で泊数(滞在期間)を自動算出できる形にしておく

大阪府の整理でも、特区民泊では「滞在期間」を記載事項としていることが明記されています(要旨)。旅館業法や住宅宿泊事業法に比べ、長期滞在管理の色が濃い制度といえます。

3制度の記載事項比較表

ここまでの内容を踏まえ、住宅宿泊事業法(民泊新法)・旅館業法・特区民泊の宿泊者名簿の記載事項を比べると、次のように整理できます(大阪府の制度比較資料および民泊制度ポータルサイトの情報を踏まえた要約)。

制度 氏名 住所 職業 連絡先 宿泊日/滞在期間の書き方の特徴
住宅宿泊事業法(民泊新法) 必須 必須 必須 任意(法令上の明記は限定的だが記載推奨) 「宿泊開始日・終了日・宿泊日数」を記録する形が推奨(民泊制度ポータルサイトの電子宿泊者名簿仕様を参考)
旅館業法 必須 必須 任意(自治体によっては様式に欄あり) 必須(令和5年12月改正で明確化) 「宿泊年月日」を記録。チェックイン・チェックアウト日を分けて記載する様式が一般的
特区民泊 必須 必須 任意 必須 「滞在期間」を必ず記録。チェックイン日・チェックアウト日と泊数が分かるようにしておく

この表から次のような特徴が分かります。

  • 住宅宿泊事業法:職業・宿泊日(期間)の記録が特徴的
  • 旅館業法:令和5年12月改正により連絡先の記載が重視
  • 特区民泊:連絡先+滞在期間の把握がポイント

自分の物件がどの制度で許可・届出されているか確認し、その制度の必須項目を満たす宿泊者名簿様式を整えることが、行政処分リスクを下げるうえで欠かせません。住宅宿泊事業法の場合は、観光庁の民泊制度ポータルサイトが配布する電子宿泊者名簿ソフトを使えば、

「住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます」(民泊制度ポータルサイトより)

とされているとおり、名簿の記載事項と定期報告を同時にカバーできます。

外国人宿泊者への対応:国籍・旅券番号の記載と本人確認の手順

外国人宿泊者への対応:国籍・旅券番号の記載と本人確認の手順

外国人宿泊者については、宿泊者名簿に「国籍」「旅券番号」を記載させるだけでは足りません。パスポート(旅券)の現物確認と写しの保存まで義務付けられている点が、日本人宿泊者との大きな違いです。ここを誤ると旅館業法・住宅宿泊事業法いずれでも指導や処分の対象になり得ます。一次情報に沿って運用手順を固めておくことが重要です。


「日本国内に住所を持たない外国人」の判断基準

外国籍であれば常にパスポート確認と写し保存が必要になるわけではありません。旅館業法・住宅宿泊事業法ともに、パスポート呈示義務の対象は「日本国内に住所を有しない外国人」に限られます。

厚生労働省は自治体への通知で、この対象を次のように解釈するよう求めています(大阪府が公表する資料等で引用)。

宿泊者が国内の住所に関する記載をしないで、例えば米国、英国等の国名又は都市名のみの記載をした場合にあっては、原則として「国内に住所を有しない外国人」と判断すること。

このため、宿泊者名簿の住所欄に日本国内の住所を書かない/書けない外国人は、原則としてパスポート呈示と写し保存の対象と理解できます。逆に、在留外国人で「東京都〜」「大阪市〜」など日本国内の住所を書いている場合、パスポート呈示は法令上の義務ではありません(任意で確認は可能)。

実務では、次のような運用ルールを決めておくと判断ミスを減らせます。

  • 住所欄に「国名のみ・海外都市名のみ」が記載された外国人は、一律で「国内住所なし」と扱う
  • 在留カードや社員証などで日本国内住所が確認できる場合は、名簿上も日本の住所を書いてもらい、パスポート呈示は必須とはしない
  • 判断に迷うケースでは安全側に倒し、「国内住所なし」と扱い、パスポートを確認・写し保存する

旅券(パスポート)の呈示要求と写しの保存方法

「国内に住所を有しない外国人」と判断した場合、宿泊者名簿の作成に加え、パスポートの呈示要求と旅券写しの保存が必要です。厚生労働省通知では、

ホテル、旅館等に対しては、国内に住所を有しない外国人が宿泊する場合には、旅券を呈示させ、その写しを保存することを義務付けている。

と明記しており、この運用は民泊(住宅宿泊事業法)にも準用されています。

実務フローのポイントは次のとおりです。

  1. チェックイン時に宿泊者名簿の記入と同時にパスポート呈示を依頼する
  2. 顔写真ページを確認し、氏名・国籍・旅券番号・顔写真の一致を目視で確認する
  3. スキャナーやスマートフォンなどで顔写真ページ全体を撮影し、画像データとして保存する
  4. 旅館業法・住宅宿泊事業法の保存期間(通常3年)に従い、宿泊者名簿と紐づけて保管する

多くの自治体は、パスポートの写しを保存する場合、宿泊者名簿の「氏名・国籍・旅券番号」欄は写しと重複するため、記載を省略してもかまわないと案内しています。大阪府などの解説でも、厚労省通知を引用し、

旅券の写しを保存する場合は、宿泊者名簿における当該外国人の氏名、国籍、旅券番号の記載を省略して差し支えない。

としています。紙名簿の記入負担を減らせる点でメリットがあります。電子宿泊者名簿を使う場合は、

  • 宿泊者名簿データに「旅券写しあり」のチェック項目を設ける
  • 旅券画像ファイルを別フォルダに保存し、名簿IDとファイル名を対応させる

といった形で、名簿情報と旅券写しをいつでも紐づけられる状態を維持するとよいでしょう。


旅券呈示を拒否された場合の対応フロー(警察連絡まで)

パスポート呈示は、国内住所のない外国人が宿泊する場合、法令で義務付けられています。宿泊者側がこれを拒否したケースへの対応も決めておく必要があります。厚生労働省通知では、

国内に住所を有しない外国人が旅券の呈示を拒否した場合には、宿泊を拒むことができること。

とし、疑わしい事例では警察への通報も求めています。多くの自治体はこの通知を踏まえ、次のような実務フローを示します。

  1. 旅券呈示の法的根拠を説明し、協力を再依頼する
  2. それでも呈示がない場合は、宿泊をお断りできる旨(旅館業法第5条等)を伝える
  3. 不審な点がある、本人かどうか疑わしい、威圧的な態度など安全上の懸念がある場合は、所轄警察署へ通報する

奈良県などのガイドラインでは、

旅券の呈示を拒否する外国人がいる場合は、不法滞在等の可能性もあるため、必要に応じて警察へ通報すること。

と明記しています。民泊事業者も同様の対応が求められます。インバウンド比率が高い物件では、運営マニュアルに

  • 「旅券呈示拒否時の説明用トーク」
  • 「宿泊拒否と警察通報の判断基準」

を具体的に書き、スタッフや代行会社と共有しておくと現場で迷いにくくなります。


ICTを活用した非対面チェックイン時の本人確認方法

スマートロックやセルフチェックイン端末を使う民泊では、「非対面でどうやって本人確認と旅券写し取得を行うか」が課題になります。この点について、愛媛県のガイドラインは、ICTを活用した民泊運営のあり方として、テレビ電話やタブレットを用いた本人確認手順をかなり具体的に示しています。

愛媛県の資料では、

ICTを活用した非対面による手続の場合であっても、宿泊者の本人確認及び国内に住所を有しない外国人の旅券確認は、対面と同等の確実性を確保する必要がある。

としたうえで、次のようなプロセスを求めています。

  1. チェックイン端末で宿泊者名簿情報を入力させる(代表者・同行者)
  2. 事業者または管理者がテレビ電話(ビデオ通話)で宿泊者と接続する
  3. 画面越しに、宿泊者本人にパスポート(または在留カード)をカメラに向けてもらい、顔と写真が一致するか確認する
  4. 旅券の顔写真ページを端末のカメラ機能等で撮影し、その画像データを暗号化して保存する

さらに愛媛県ガイドラインは、

宿泊者本人と旅券の写真の一致確認、旅券の写しの保存等、旅館業法及び関係通知に定められた事項を確実に行うこと。

と繰り返し強調しています。「無人フロントだからパスポート確認ができなかった」という言い訳は通用しないと考えたほうがよいでしょう。

実務上押さえたいポイントは次のとおりです。

  • ICTチェックインシステムにビデオ通話機能を必ず組み込み、チャットのみで済ませない
  • システム内に「旅券画像アップロード」機能を設け、撮影日時・予約IDと自動で紐づける
  • 通信はTLS等で暗号化し、サーバ側でもアクセス権限を限定して個人情報を保護する

観光庁の民泊制度ポータルサイトで配布されている電子宿泊者名簿ソフトには、ビデオ通話や画像アップロード機能は含まれていません。ただし、

「住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます」(民泊制度ポータルサイト)

と案内されているように、名簿と報告部分の要件は十分カバーできます。パスポート確認については、別途ICTチェックインシステムやオンライン会議ツールを組み合わせる形で運用設計すると、法令遵守と運営効率を両立しやすくなります。

宿泊者名簿の書き方:記入例と各項目の注意点

宿泊者名簿の書き方:記入例と各項目の注意点

宿泊者名簿は「何を記載するか」だけでなく、「どう書くか」「誰が書いても同じルールで整理できるか」が重要です。一次情報で示されている公式ルールを押さえつつ、民泊運営でそのまま使える実務的な書き方を整理します。

氏名・住所・職業の記入方法と「自筆不要」の根拠

まず押さえておきたいのは、「宿泊者本人の手書きでなければならない」という決まりがない点です。大阪府(観光庁資料を引用)は次のように明記しています。

「宿泊施設等(注1)は、法令等(注2)の定めにより宿泊者名簿を備え付け、管理しなければなりません。(宿泊者名簿の記載は、宿泊者の自筆での記載が必須とされるものではありません…)」

このため実務では次のような運用が可能です。

  • オンラインチェックインフォームでゲストが入力した内容を、そのまま宿泊者名簿データに反映する
  • 口頭やチャットで確認した内容を、ホストやスタッフが代筆する

いずれの場合も、「内容が正確であること」と「誰の情報かが後から分かる状態」であれば要件を満たします。

氏名の書き方

  • 日本人宿泊者:戸籍・住民票に準じたフルネームを記載する
    例:山田 太郎
  • 外国人宿泊者:旅券(パスポート)に記載されたローマ字表記を基本とする
    例:John Smith

旅券コピーを保存する場合、観光庁資料では次のようにしています。

「旅券の写しの保存がある場合は、これを宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の記載に代えることができます。」

旅券画像を名簿と紐づける運用であれば、氏名・国籍・旅券番号は画像側で確認できるようにしておくとよいでしょう。

住所の書き方

  • 日本在住者:住民票上の住所を原則とし、「都道府県+市区町村+番地」まで記載
    例:東京都渋谷区渋谷1-2-3
  • 日本に住所がない外国人:旅券上の住所ではなく、本人が「自分の住所」として告げた国外の住所を記載

観光庁資料は、「日本国内に住所を持たない外国人の方(宿泊者が自らの住所として国外の地名を告げた場合をいいます)」と定義しており、その申告内容をそのまま名簿に写します。

職業の書き方(住宅宿泊事業法の場合)

観光庁資料は住宅宿泊事業法について、

「住宅宿泊事業法の場合は、職業及び宿泊日」

と示しており、職業の記載を求めています。実務上は次のような簡単な表現で構いません。

  • 会社員、自営業、公務員、学生、無職、主婦(主夫)、フリーランス など

オンラインフォームでは、選択肢と自由記述(その他)を組み合わせると入力ミスや判読不能な表記を減らせます。

宿泊日の数え方:12時起点の24時間カウントルール

宿泊日数のカウントは、自治体の定期報告や課税に直結します。国土交通省の基準に合わせておくと安心です。民泊制度ポータルサイトの電子宿泊者名簿仕様では、次のように示されています。

「宿泊日数 宿泊期間。各宿泊日は 12:00 を起点として 24 時間を一日とカウントします」

この「12:00起点ルール」に従うと、次のように整理できます。

  • 宿泊開始日:ゲストが最初にチェックインする日
  • 宿泊終了日:ゲストが最終的にチェックアウトする日
  • 宿泊日数:
    1泊=チェックイン日12:00〜翌日12:00
    2泊=チェックイン日12:00〜3日目12:00

例として、7月1日15:00チェックイン、7月3日10:00チェックアウトの場合は次のとおりです。

  • 宿泊開始日:7月1日
  • 宿泊終了日:7月3日
  • 宿泊日数:2日(7/1 12:00〜7/3 12:00)

チェックイン・チェックアウトの時刻(15:00/10:00など)は、電子宿泊者名簿仕様でも「開始時刻」「終了時刻」として別項目です。紙の名簿でもできる限り時刻まで記録しておくと、トラブル発生時や自治体からの照会に対応しやすくなります。

グループ宿泊時の記載方法:代表者と同行者の区別

複数人での滞在では、「1予約=1行」ではなく「1名=1行」で記録するのが基本です。民泊制度ポータルサイトの電子宿泊者名簿項目には次のような区分があります。

「種別 宿泊者の種別(代表者または同行者)」

「グループ識別 当該宿泊日におけるグループ(代表者と…)」

この仕様に合わせて、紙やExcelベースの名簿も次のように設計しておくと運用しやすくなります。

  • 代表者(予約者)
    種別:代表者
    グループID:任意の番号(例:20240701-001)を付ける
    連絡先:電話番号・メールアドレスを必ず記載
  • 同行者
    種別:同行者
    グループID:代表者と同じIDを記載

こうしておくと、後から「このグループは何人で、誰が代表だったか」を簡単に追えます。自治体への定期報告(宿泊実績定期報告データ)も、国土交通省の電子宿泊者名簿ソフトで、

「複数の届出住宅(届出番号)を管理している場合でも、届出住宅(届出番号)毎に宿泊者名簿を作成し管理することができます。」

と案内されているように、届出住宅ごと・グループごとに整理できます。自前の名簿でも同じ考え方でそろえておくとよいでしょう。

記入例(日本人宿泊者・外国人宿泊者それぞれのサンプル)

最後に、実際の名簿フォーマットを想定したサンプルを示します。ここでは住宅宿泊事業を前提に、「職業」「宿泊開始日・終了日・宿泊日数」まで含めた形とします。

日本人宿泊者(家族3名、代表者+同行者)の例

【届出住宅番号】M123456789

No.1
種別:代表者
グループID:20240701-001
氏名:山田 太郎
住所:東京都渋谷区渋谷1-2-3
職業:会社員
連絡先:090-1234-5678 / taro@example.com
宿泊開始日:2024-07-01 開始時刻:15:00
宿泊終了日:2024-07-03 終了時刻:10:00
宿泊日数:2

No.2
種別:同行者
グループID:20240701-001
氏名:山田 花子
住所:東京都渋谷区渋谷1-2-3
職業:主婦
宿泊開始日:2024-07-01 開始時刻:15:00
宿泊終了日:2024-07-03 終了時刻:10:00
宿泊日数:2

No.3
種別:同行者
グループID:20240701-001
氏名:山田 一郎
住所:東京都渋谷区渋谷1-2-3
職業:学生
宿泊開始日:2024-07-01 開始時刻:15:00
宿泊終了日:2024-07-03 終了時刻:10:00
宿泊日数:2

同一グループは「グループID」「宿泊開始日・終了日・宿泊日数」をそろえ、種別で代表者と同行者を区別します。

日本に住所がない外国人宿泊者(友人2名、代表者+同行者)の例

観光庁資料では、国内に住所を持たない外国人について次のように求めています。

「日本国内に住所を持たない外国人の方については、宿泊者名簿への国籍及び旅券番号の記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存してください。」

この前提での記入例は次のとおりです。

【届出住宅番号】M123456789

No.4
種別:代表者
グループID:20240705-001
氏名:John Smith
国籍:United States
旅券番号:X12345678
住所(国外):123 Main Street, Seattle, WA, USA
職業:Engineer
連絡先:+1-206-000-0000 / john@example.com
宿泊開始日:2024-07-05 開始時刻:18:30
宿泊終了日:2024-07-07 終了時刻:09:00
宿泊日数:2
旅券写し:保存済(2024-07-05撮影、ファイル名:20240705-JohnSmith.jpg)

No.5
種別:同行者
グループID:20240705-001
氏名:Michael Brown
国籍:United States
旅券番号:Y98765432
住所(国外):456 Pine Street, Portland, OR, USA
職業:Designer
宿泊開始日:2024-07-05 開始時刻:18:30
宿泊終了日:2024-07-07 終了時刻:09:00
宿泊日数:2
旅券写し:保存済(2024-07-05撮影、ファイル名:20240705-MichaelBrown.jpg)

このように、

  • 氏名・国籍・旅券番号
  • 国外住所
  • 代表者・同行者の区分
  • 12:00起点ルールに沿った宿泊日数

をそろえておけば、観光庁や自治体が示す要件と整合した宿泊者名簿を、紙でもExcelでも作成できます。電子宿泊者名簿ソフトを使う場合は、ここで示した項目名をソフトの項目と対応させつつ入力ルールを決めると、スタッフ間での書き方のブレを抑えられます。

電子宿泊者名簿の活用方法:国土交通省配布ソフトの使い方

電子宿泊者名簿の活用方法:国土交通省配布ソフトの使い方

電子宿泊者名簿ソフトの概要とダウンロード方法

住宅宿泊事業者向けに、国土交通省・観光庁は「電子宿泊者名簿ソフト」を無償配布しています。公式な説明では次のように案内しています。

「住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます。」

「ご利用のパソコン環境に合った電子宿泊者名簿ソフトをダウンロードしていただけます。」

(いずれも民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」ページより)

対応OS・動作環境について、同ページでは次のように明記しています。

【Windows版】
・Microsoft Windows 10 (64bit)
・Microsoft Windows 11 (64bit)

【動作条件】
・メモリ容量:2G以上
・画面解像度:1366×768以上
・空きディスク容量:200MB以上

Macではそのまま利用できません。Boot Campや仮想環境などでWindowsを動かす必要があります。現場で使うノートPCに、上記条件を満たすWindows 10/11が入っているか事前に確認しておきましょう。

ダウンロードの流れは次のとおりです。

  1. 民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」ページを開く
  2. 「電子宿泊者名簿」の説明欄から、Windows版のダウンロードリンクをクリックする
  3. 利用条件(免責・著作権・改造禁止・再配布禁止など)を確認し、同意のうえダウンロードする
  4. ダウンロードしたインストーラーを起動し、画面の指示に従ってインストールする

観光庁は利用条件として、

「電子宿泊者名簿を使用した結果、損害が発生しても国土交通省、観光庁は一切の責任を負いません」

と明示しています(同ページより引用)。バックアップの取得やウイルス対策ソフトの導入など、PC側のリスク管理は事業者自身で徹底する必要があります。

ソフトで管理できる項目と入力の流れ

電子宿泊者名簿ソフトで作成できる宿泊者名簿の項目は、民泊制度ポータルサイト上で一覧が公開されています。公式説明では、

「本ソフトウェアで作成できる宿泊者名簿の内容は以下の通りです。」

「複数の届出住宅(届出番号)を管理している場合でも、届出住宅(届出番号)毎に宿泊者名簿を作成し管理することができます。」

としたうえで、主な項目として次のような内容を挙げています(同ページの表より要約)。

  • 宿泊開始日・開始時刻
  • 宿泊終了日・終了時刻
  • 宿泊日数(「各宿泊日は12:00を起点として24時間を一日とカウント」)
  • 種別(代表者または同行者)
  • グループ識別(グループID)
  • 氏名
  • 住所
  • 職業
  • 国籍
  • 旅券番号

前のセクションで整理した紙・Excelの項目と基本的に同じ構成です。「12:00起点ルール」についてもソフト側の仕様として明文化されています。

入力の実務イメージは次のとおりです。

  1. 物件(届出番号)の選択
    対象となる届出住宅を選び、その物件の宿泊者名簿画面を開く。
  2. 新規レコードの追加
    新しい宿泊者を登録するとき、「新規作成」等のボタンから1行追加し、代表者から順に入力する。
  3. 代表者・同行者とグループ識別の設定
    1グループにつき代表者1名+同行者数名をひとまとまりとして登録する。代表者・同行者の「種別」を選び、共通の「グループ識別(グループID)」を付ける。
  4. 宿泊期間と日数の入力
    チェックイン/チェックアウトの日時を「宿泊開始日・開始時刻」「宿泊終了日・終了時刻」に入力する。宿泊日数はソフトが自動計算するが、12:00起点である点を意識し、極端な早朝チェックインや深夜チェックアウトがある場合は値を確認する。
  5. 氏名・住所・職業・国籍・旅券番号の登録
    旅券や身分証で確認した内容を各項目に転記する。紙の名簿やExcelで管理している場合は、表の列名をソフトの項目名に合わせておくと現場での混乱を減らせる。

入力ルールをスタッフ用マニュアルとして共有し、「グループ識別の付け方」「職業欄に迷ったときの書き方」などをあらかじめ決めておくと、名簿の品質が安定しやすくなります。

複数届出住宅を管理する場合の届出番号別管理

複数物件を運営している場合、届出番号ごとに宿泊者名簿を分けておくことが、法令順守と実務の両面で重要です。民泊制度ポータルサイトの説明でも、

「複数の届出住宅(届出番号)を管理している場合でも、届出住宅(届出番号)毎に宿泊者名簿を作成し管理することができます。」

と明記しており、電子宿泊者名簿ソフト自体がマルチ物件運用を前提に設計されています(同ページより)。

活用のポイントは次のとおりです。

  • 物件ごとに名簿データを分割する
    物件A・物件B・物件Cと、届出番号単位で名簿ファイルを持つイメージで運用する。こうしておくと、自治体ごとの立入検査や報告要請に対し、該当物件のみを切り出して提示しやすくなる。
  • 届出番号をキーにして検索・集計する
    物件ごとの稼働状況や国籍別の宿泊傾向を見たいとき、届出番号別にフィルタリングできるため、投資判断にも転用できる。
  • 管理委託先ごとにアクセス範囲を分けやすい
    物件ごとに管理会社や清掃業者が異なるケースでは、届出番号単位の名簿をエクスポートして共有する形にすれば、不要な個人情報を他物件の運営者に渡さずに済む。

複数物件運営を視野に入れている場合は、開業初期からこのソフトで届出番号別管理に慣れておくと、後からExcel等から移行する手間を抑えられます。

電子名簿から定期報告データ(CSVファイル)を作成する手順

住宅宿泊事業法では「二ヶ月毎に宿泊実績を自治体へ報告する」義務があります。電子宿泊者名簿ソフトは、この定期報告用データ(CSVファイル)を自動作成できるよう設計されています。民泊制度ポータルサイトでは電子宿泊者名簿について、

「二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます。」

と説明しています(同ページより)。宿泊者名簿を日々入力しておけば、報告時期に改めて集計作業を行う必要はありません。

一般的な作業の流れは次のとおりです。

  1. 報告対象期間の指定
    ソフトのメニューから「定期報告データ作成」「CSV出力」などの機能を選び、報告対象期間(例:4月1日〜5月31日)を指定する。
  2. 届出住宅(届出番号)の選択
    単一物件なら1つの届出番号を、複数物件をまとめて報告する場合は対象物件を選択する。自治体によっては物件ごとの報告様式が異なるため、管轄自治体の要領に従う。
  3. CSVファイルの出力
    出力先フォルダを指定し、CSVファイルを保存する。ファイル名に「届出番号_期間(例:M123456-202404-202405.csv)」などを含める運用にしておくと後から探しやすい。
  4. 内容の確認
    ExcelなどでCSVを開き、宿泊日数や人数合計に明らかな誤りがないか目視でチェックする。代表者と同行者のカウント方法が自治体の様式と合っているかも確認する。
  5. 自治体への提出
    各自治体の指定方法(オンラインシステムへのアップロード、メール添付、紙への転記など)に従って提出する。電子データ提出が認められている自治体では、ソフトが出力したCSVをそのままアップロードできるケースも多い。

電子宿泊者名簿ソフトを中心に運用すれば、

  • 宿泊者名簿の作成(法令要件を満たす項目構成)
  • 届出番号ごとのデータ管理
  • 二ヶ月毎の定期報告データの自動生成

まで一括対応できます。紙やExcelによる手作業集計と比べて、ヒューマンエラーのリスクを大きく減らせます。特に複数物件を運営する事業者ほど導入メリットは大きいといえます。

宿泊者名簿の保存方法・保存場所・保存期間のルール

宿泊者名簿の保存方法・保存場所・保存期間のルール

住宅宿泊事業法では、宿泊者名簿を作成して終わりではなく、一定期間・一定の場所で適切に保存し、必要に応じて行政に提出できる状態にしておくことが求められます。保存期間・保存場所・紙/電子それぞれの扱いを整理しておくと、監査対応やトラブル回避に役立ちます。

保存期間は3年間:起算点と廃業後の取り扱い

まず押さえたいのが「保存期間」です。各都道府県の民泊ガイドラインやQ&Aでは、「宿泊者名簿は3年間保存」と明記されています。

千葉県の民泊手引きでは、旅館業法と同様に「宿泊者名簿は記載の日から3年間保存すること」としています。大阪府や奈良県、愛媛県の案内も同趣旨です。これらは住宅宿泊事業法に基づく「名簿の整備義務」「報告・検査への協力義務」を前提にした運用といえます。

実務では次のように整理しておくと分かりやすいでしょう。

  • 保存期間:宿泊者名簿に記載した日(または宿泊終了日)から3年間
  • 対象:紙の名簿・Excel・専用ソフト等の電子名簿を問わず、すべての宿泊者記録
  • 廃棄のタイミング:3年を経過したものから順次廃棄可能

廃業した場合でも、営業中に作成した宿泊者名簿については、原則として廃業後も3年間は保存義務が残ると考えるのが安全です。住宅宿泊事業法第17条では、都道府県知事等による報告徴収・立入検査の権限を定めており、

都道府県知事は、この法律の施行に必要な限度において、住宅宿泊事業者に対し、報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該住宅宿泊事業者の事務所等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

としています(住宅宿泊事業法第17条第1項、要約)。この「帳簿書類」に宿泊者名簿が含まれるため、保存期間内であれば廃業後も資料提出を求められる可能性を想定しておく必要があります。

保存場所の選択肢:届出住宅・営業所・事務所のいずれか

宿泊者名簿をどこで保管するかについても、各自治体は共通したスタンスをとっています。多くの都道府県の民泊ガイドでは、旅館業の取り扱いに準じて次のように求めています。

  • 届出住宅(実際に宿泊を受け入れる物件)
  • 事業者の営業所または事務所

大阪府や奈良県の民泊Q&Aでは「宿泊者名簿は届出住宅又は営業所・事務所のいずれかで保存すること」と明記しています。千葉県・愛媛県も同趣旨で解説しています。これは住宅宿泊事業法第17条による立入検査・資料提出を円滑に行うため、行政から見て所在が明確である必要があるためです。

実務では次のような運用が一般的です。

  • 個人で1物件のみ運営:届出住宅内に紙名簿を保管し、電子データは自宅PCやクラウドで管理する
  • 複数物件を法人で運営:本社や管理事務所に各物件分の名簿を集約し、必要に応じて現地にも写しを備え付ける

いずれのパターンでも、「行政から所在地を聞かれたときに即答できる」状態にしておくことが重要です。

紙・電子データそれぞれの保存上の注意点

宿泊者名簿は、紙でも電子でも保存できます。ただし電子化にあたっては、「法令上の要求事項を満たすこと」と「行政が求めるときに閲覧・出力できること」の2点を押さえる必要があります。

国土交通省・観光庁の「民泊制度ポータルサイト」では、住宅宿泊事業者向けに「電子宿泊者名簿」ソフトを無償配布しており、次のように案内しています。

電子宿泊者名簿 民泊制度運営システムでは、電子宿泊者名簿(住宅宿泊事業者向けのソフトウェア)の配布を行っています。住宅宿泊事業法で定められた「宿泊者名簿」及び、二ヶ月毎に報告が必要となる「宿泊実績定期報告データ」を作成することができます。

(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」)

同ソフトの仕様として、

本ソフトウェアで作成できる宿泊者名簿の内容は以下の通りです。複数の届出住宅(届出番号)を管理している場合でも、届出住宅(届出番号)毎に宿泊者名簿を作成し管理することができます。

とあり、法令で求められる項目を満たした電子名簿を作成・保存できることが示されています。

さらに大阪府は「旅館業の施設における宿泊者名簿の記載方法のデジタル化について(令和5年3月31日事務連絡)」を公表し、タブレット端末等を用いた電子的な宿泊者名簿の作成・保存を認める方針を示しています。この事務連絡では、

  • 宿泊者に紙ではなくタブレット等で情報を入力してもらう方式
  • 事業者側が電子データとして保存する方法

など、実務上のデジタル化パターンを例示し、条件を満たせば紙に出力しなくてもよいとしています。

これらを踏まえ、宿泊者名簿の保存方法で注意したい点は次のとおりです。

紙で保存する場合

  • 宿泊者自身の署名が必要な記載事項(旅券番号など)を漏れなく記入する
  • ファイルやバインダーで年月順・物件ごとに整理する
  • 3年間、水濡れ・紛失・盗難のリスクが低い場所で保管する
  • 廃棄時はシュレッダーや溶解処理で個人情報を完全に処分する

電子データで保存する場合

  • 住宅宿泊事業法で求められる項目(氏名、住所、職業、国籍・旅券番号など)をすべて記録する形式にする
  • 不正な改ざん・削除が行われないよう、アクセス権限を限定し、バックアップを定期的に取得する
  • 3年間、読み込み可能なファイル形式で保持する(専用ソフトのバージョンアップやOS変更にも注意)
  • 行政から求められた際は、紙に印刷して提出できる運用にしておく

電子名簿を採用する場合でも、システム障害に備えて「直近数か月分だけ紙に出力しておく」「クラウドと外付けHDDの二重バックアップを取る」といった冗長化を検討しておくと安心です。

都道府県知事から提出を求められた場合の対応

住宅宿泊事業法第17条では、都道府県知事が住宅宿泊事業者に対して報告や資料の提出を求めたり、立入検査を行ったりする権限を定めています。観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、住宅宿泊事業者の義務として、

  • 法令に定める帳簿書類(宿泊者名簿を含む)を整備すること
  • 行政からの報告徴収・立入検査に協力すること

が繰り返し説明されています。

宿泊者名簿の提出・提示を求められる場面としては、次のようなケースが想定されます。

  • 近隣住民からの苦情・通報を受け、実際の宿泊実態を確認する必要がある場合
  • 無届営業や営業日数オーバー等の疑いがあり、調査が行われる場合
  • 事故事案・犯罪捜査への協力要請が行政経由で入る場合

このような要請に備え、日ごろから次のポイントを意識しておくとよいでしょう。

  1. 名簿の所在を明確にしておく
    紙・電子を問わず、「何年何月分の名簿が、どのフォルダ/キャビネットにあるか」をいつでも説明できるよう整理しておく。
  2. 物件ごと・年月ごとにファイリング
    「届出番号+年月」で分けておくと、特定期間のデータだけをすぐ取り出せる。
  3. 提出依頼が来たときの社内フローを決めておく
    誰が窓口となり、どの範囲の名簿を、どの形式(閲覧のみ/写し提出)で出すか、事前に運営マニュアルに明記しておく。
  4. 個人情報保護とのバランスに注意する
    行政からの正当な要請に応じることは法令上の義務ですが、それ以外の第三者からの開示要求には原則応じないスタンスを徹底する。社内教育やマニュアルで周知しておくことが重要です。

必要なときにきちんと提出できるよう、「3年間・指定された場所で・すぐに取り出せる状態」で宿泊者名簿を管理しておくことが、民泊運営者に求められる実務対応になります。

定期報告との連携:宿泊者名簿データを2か月ごとの報告に活かす

定期報告との連携:宿泊者名簿データを2か月ごとの報告に活かす

住宅宿泊事業法では、届出住宅ごとに2か月に1回、宿泊実績の定期報告が義務付けられています。民泊制度ポータルサイトでは電子宿泊者名簿ソフトについて、

「住宅宿泊事業法で定められた『宿泊者名簿』及び、二ヶ月毎に報告が必要となる『宿泊実績定期報告データ』を作成することができます」

と説明しており(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」)、宿泊者名簿のデータを定期報告に転用することを前提としています。宿泊者名簿を正しく作成・整理しておけば、2か月ごとの定期報告は「名簿データの集計」によって効率的に処理できます。

定期報告の提出タイミングと報告対象期間の考え方

住宅宿泊事業法上、住宅宿泊事業は「人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないもの」とされ、

「日数は、毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間において人を宿泊させた日数で算定」

すると定められています(国土交通省「住宅宿泊事業について」)。一方、定期報告はこの年間180日の枠とは別に、「2か月ごとに区切って実績を報告する」仕組みです。

電子宿泊者名簿ソフトでは、届出番号ごとに宿泊記録を入力すると、指定した「報告対象期間」に含まれる宿泊データだけを抽出し、CSV形式の定期報告データを出力できます。運営側では次のように整理すると扱いやすくなります。

  • 報告期間は「奇数月・偶数月」の2か月単位(例:1–2月分、3–4月分…)で管理する
  • 各期間の締め日から行政への提出期限まで、社内の「作業期限」を逆算してカレンダーに登録する
  • 宿泊者名簿は「宿泊日ベース」で記録し、どの2か月期間に属するかが一目で分かる状態にする

電子宿泊者名簿ソフトでは宿泊日数について、

「各宿泊日は 12:00 を起点として 24 時間を一日とカウント」

としています(民泊制度ポータルサイト「電子宿泊者名簿・定期報告方法」)。この起算方法に合わせて宿泊日・宿泊日数を管理することで、集計値とシステムの計算結果が一致しやすくなります。

報告に必要なデータ項目:宿泊日数・宿泊者数・延べ人数・国籍別内訳

民泊制度ポータルサイトで配布されている電子宿泊者名簿ソフトは、定期報告用CSVを出力できる仕様です。そのデータ項目として、少なくとも次のような情報が必要です。

  • 届出番号(届出住宅ごとに管理)
  • 報告対象期間(例:2026/01/01〜2026/02/29)
  • 宿泊日数
  • 宿泊者数(ユニーク人数)
  • 延べ宿泊者数
  • 国籍別の宿泊者数(22区分)
  • 宿泊日(宿泊実績の基礎となる日付)

民泊制度ポータルでは電子宿泊者名簿について、

「複数の届出住宅(届出番号)を管理している場合でも、届出住宅(届出番号)毎に宿泊者名簿を作成し管理することができます」

と説明しています(同上)。定期報告でも「届出番号単位」での集計が前提です。そのため、宿泊者名簿の段階で次のフィールドを必ず押さえておくとスムーズに連携できます。

  • 届出番号
  • 宿泊開始日・終了日・宿泊日数
  • 宿泊者ごとの国籍(定期報告の22区分と対応するコード)
  • 宿泊代表者・同行者の区別(グループ単位で延べ人数を集計しやすくするため)

宿泊者名簿の1行を「1人×1滞在」として記録しておけば、

  • 宿泊日数:滞在ごとの日数を合計
  • 宿泊者数:当該期間に宿泊したユニーク人数をカウント
  • 延べ宿泊者数:各滞在の宿泊日数×人数を合計
  • 国籍別内訳:国籍コードごとの延べ宿泊者数を集計

といった形で、2か月ごとの定期報告に必要な数値を自動的に算出できます。

民泊制度運営システムへのCSVアップロード手順

国土交通省の民泊制度ポータルでは、電子宿泊者名簿ソフトで作成した定期報告データ(CSV形式)を「民泊制度運営システム」にアップロードする方式を想定しています。

電子宿泊者名簿・定期報告方法のページでは、Windows向けソフトとして、

「住宅宿泊事業者向けのソフトウェア」の配布を行っており

「宿泊者名簿」及び「宿泊実績定期報告データ」を作成することができます

と案内しています(民泊制度ポータルサイト)。実務上の流れは次のとおりです。

  1. 電子宿泊者名簿ソフトに日々の宿泊者情報を入力する(または自前のシステムからCSVインポート)
  2. 2か月ごとに「報告対象期間」を指定し、定期報告用CSVを出力する
  3. 民泊制度運営システムにログインし、届出番号ごとにCSVファイルをアップロードする
  4. 画面上で数値を確認し、内容に問題がなければ提出を確定する

複数物件を運営する場合は、「届出番号ごとに別ファイル」とするか、システムが対応していれば1ファイル内に複数届出番号分をまとめて出力することも可能です。アップロード後に物件ごとの内容を確認するとよいでしょう。

宿泊者名簿を独自ツールで管理している場合でも、上記の必須項目(届出番号・宿泊日・宿泊日数・人数・国籍コードなど)をそろえ、民泊制度運営システムが公開しているCSV仕様に合わせてエクスポートできるよう設計しておくと、手作業による転記を最小限に抑えられます。

報告漏れ・遅延時のリスクと対処法

定期報告は住宅宿泊事業法上の義務です。報告を怠ると行政指導や監督処分の対象になり得ます。観光庁のガイドラインや各自治体の要綱では、定期報告の不履行が続いた場合に、指導・勧告・業務停止命令・届出抹消などの措置があり得ると示している例が多くあります。

管理委託を行っている場合、愛媛県は住宅宿泊事業関連ページで、

「住宅宿泊管理業者に委託している場合は管理受託契約で定期的な情報提供を取り決めることが望ましい」

としています(愛媛県「住宅宿泊事業について」等)。報告の法的義務者は住宅宿泊事業者です。管理会社任せにせず、次のような内部ルールを整備しておく必要があります。

  • 報告締切の少なくとも1週間前までに、宿泊実績データ(宿泊者名簿の集計値)を管理会社から受領する
  • 受領データと自社の予約管理システムの数字を突合し、不自然な欠損や誤りがないか確認する
  • 提出期限に間に合わないおそれがある場合、所管行政庁に早めに相談し指示を仰ぐ

宿泊者名簿との連携という点では、

  1. 日々の宿泊者名簿を正確に記録する
  2. 物件・期間ごとに名簿を整理する
  3. 2か月ごとに名簿から定期報告用データを自動集計する

という流れを仕組み化しておくことが、報告漏れや遅延を防ぐうえで最も有効です。複数物件を展開する投資家・事業者にとっては、「届出番号ごとの名簿・定期報告データをワンクリックで出せる状態」にしておくことが、コンプライアンスと業務効率の両面で大きな差につながります。

よくあるミスとトラブル対策:宿泊者名簿の記載漏れ・不備を防ぐ

よくあるミスとトラブル対策:宿泊者名簿の記載漏れ・不備を防ぐ

宿泊者名簿は「なんとなく記入してもらう帳簿」ではありません。テロ防止や感染症対策の観点からも厳格な管理が求められる法定帳簿です。観光庁も、

「国内におけるテロ等の不法行為や感染症のまん延を未然に防止する観点から、宿泊者名簿…の正確な記載を徹底してください」

と明記し、旅館業法・特区民泊・住宅宿泊事業法のいずれにも宿泊者名簿(または滞在者名簿)の備付け義務を課しています(観光庁「宿泊者名簿の記載徹底について」)。

一方で実務では、「代表者だけしか書いていない」「外国人の旅券番号が抜けている」「長期滞在者を放置している」などのミスが目立ちます。自治体の立入検査や近隣トラブルをきっかけに一気に露見することも珍しくありません。ここでは民泊運営で特に起こりやすいリスクパターンと、その予防策を整理します。

代表者のみ記載してしまうミス:全員記載が原則

複数人のグループ宿泊では、チェックイン時に代表者だけがフロントやセルフチェックイン端末で記入し、そのまま全員分として扱ってしまう運用が起こりがちです。しかし自治体ガイドラインはこの点を明確に否定しています。

愛媛県の指導では、「宿泊者名簿には、宿泊者一人一人について、宿泊契約ごとに宿泊者が分かるように記載することが必要であり、代表者のみの記載は認められない」としています(愛媛県「住宅宿泊事業について」等)。「代表者のみ記入で『その他3名』とまとめる」運用は認められないと解されます。

実務上のポイントは次のとおりです。

  • 宿泊者全員分の記載が基本になる
    グループ宿泊でも、一人ひとりの氏名・住所などを名簿上で特定できる状態にする必要がある。
  • 予約情報との紐付けを意識する
    「宿泊契約ごとに宿泊者が分かるように」整理することが求められます。予約番号・チャネル(Airbnb、Booking.comなど)と宿泊者名簿を対応させて管理する仕組みが重要です。
  • セルフチェックインでも全員入力を仕組み化する
    タブレットや事前オンラインフォームを使う場合、「代表者のみ入力で次に進める」UIにすると、ルール違反を誘発します。全員分の入力欄を必須にし、未入力ではチェックイン完了できない仕様にすることが望ましいといえます。

観光庁は「宿泊者名簿の記載は、宿泊者の自筆での記載が必須とされるものではありません」としており(観光庁「宿泊者名簿の記載徹底について」)、運営側で予約情報を転記したり、タブレット入力をしたりすること自体は認めています。その分、「正確で網羅的な記載」を担保する責任が事業者側にある点を意識する必要があります。

外国人宿泊者の旅券番号未記載・旅券写し未保存

外国人宿泊者については、テロ防止や不法滞在対策の観点から、より厳格な取り扱いが求められます。観光庁は、日本国内に住所を持たない外国人について次のように明確に求めています。

日本国内に住所を持たない外国人の方…については、宿泊者名簿への国籍及び旅券番号の記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存してください。また、旅券の写しの保存がある場合は、これを宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の記載に代えることができます。(観光庁「宿泊者名簿の記載徹底について」)

ここでは次の3点が重要です。

  1. 対象は「日本国内に住所を持たない外国人」
    住民票を有する在留外国人など、日本国内に住所がある外国人は、原則として日本人と同様の扱いになります。チェックイン時に国内住所の有無を確認し、運用を整理しておく必要があります。
  2. 国籍・旅券番号の記載と旅券の写し保存が必要
    単にパスポートを目視確認するだけでなく、名簿上に国籍と旅券番号を記載し、さらに旅券コピー(またはスキャンデータ)を保存しなければなりません。
  3. 旅券写しは名簿記載の代替にもなり得る
    旅券の写しを保存する場合、それを宿泊者名簿の氏名・国籍・旅券番号の記載に代えることができます。パスポート画像を名簿と紐づけて保管しておけば、名簿上の一部記載を補完できます。

デジタル運用では、チェックインアプリでパスポートを撮影しOCR読み取りを行い、

  • 旅券画像をクラウド上で暗号化保存する
  • 抽出した氏名・国籍・旅券番号を宿泊者名簿データベースに自動連携する

といった仕組みを構築すると、記載漏れを大幅に減らせます。紙運用で「フロント担当者の目視確認と手書き転記だけ」に頼ると、繁忙期やシフトによって抜け漏れが発生しやすく、立入検査で指摘される典型的なパターンになります。

長期滞在者(7日以上)への定期的な本人確認義務

民泊では1週間以上の長期滞在も多くなっていますが、長期滞在の場合、「最初のチェックインだけしっかりしておけばよい」とは限りません。愛媛県のガイドラインでは住宅宿泊事業について、次のような注意点を示しています。

  • 宿泊者名簿は「宿泊契約ごとに宿泊者が分かるように記載」すること
  • 宿泊契約が7日以上の場合は「定期的な面会等による確認」が必要であること

長期滞在の名義人と実際の居住者が入れ替わり、又貸しや不法滞在の温床になることを防ぐ狙いがあります。

トラブル防止の実務対応として次のようなルール化が考えられます。

  • 7泊以上の予約は「長期滞在フラグ」を立てる
    予約管理システムで7泊以上のプランを自動抽出し、マネージャーやオーナーにアラートを送る。
  • 定期的な本人確認の方法を明文化する
    対面チェックインが難しい民泊でも、ビデオ通話やチャットでの身分証提示、物件訪問時の本人確認など、実行可能な手段を組み合わせて「誰が・いつ・どの方法で確認するか」を運用マニュアルに落とし込む。
  • 名簿上の情報と実居住者を突合する
    長期滞在中に利用者が追加・変更された場合は、宿泊者名簿にも反映させる運用を徹底し、初日分の名簿だけで放置しない。

長期滞在を軸にした民泊は収益性が高い一方、近隣から「実質的な下宿」「不法就労者の寮ではないか」と疑われやすい面もあります。定期的な本人確認と名簿更新を行っていることは、行政への説明資料にもなります。チェックリストやログなど、あえて証拠が残る形で運用しておくと安心です。

管理業者に委託している場合の責任分担と確認体制

住宅宿泊事業では「住宅宿泊管理業者」に運営業務を委託するケースが多くあります。愛媛県も、

住宅宿泊管理業…住宅宿泊事業者から委託を受けて、報酬を得て、住宅宿泊事業に係る業務や、届出住宅の維持保全に関する業務を行う事業

と定義しています(愛媛県「住宅宿泊事業について」)。実務上は、宿泊者名簿の作成・保管も管理業者が担当することが一般的です。

ただし、法令遵守の最終責任は住宅宿泊事業者にある点を誤解してはいけません。愛媛県の案内でも、「報告の法的義務者はあくまで住宅宿泊事業者である」と明記しています。定期報告用の宿泊実績データについても、

管理会社側から事業者へ定期的に宿泊実績データを提供する体制を契約上明確にしておくことが重要

としています(愛媛県「住宅宿泊事業について」等)。

宿泊者名簿の記載漏れ・保存不備を防ぐには、次のような委託・チェック体制が有効です。

  • 契約書に名簿業務の範囲と水準を具体的に記載する
    「宿泊者名簿を作成・保存する」という表現にとどめず、
    ・全宿泊者(代表者のみ不可)の情報を記載すること
    ・日本国内に住所を持たない外国人の国籍・旅券番号の記載と旅券写し保存を行うこと
    ・名簿を何年間・どの媒体で保存するか
    など、観光庁や自治体の指針を前提に必要要件を盛り込む。
  • 名簿データの定期共有を義務付ける
    「報告締切の1週間前までに宿泊実績データ(宿泊者名簿の集計値)を管理会社から受領する」など、共有期限と形式を契約・業務フローに落とし込む。
  • 抜き取りチェックを継続的に実施する
    数か月に一度、事業者側でランダムに予約を数件ピックアップし、
    ・予約システムの宿泊者情報
    ・管理業者が作成した宿泊者名簿
    ・外国人についてはパスポート写し
    を突き合わせて、漏れや誤記がないか確認する。問題が見つかった場合は是正計画と再発防止策を文書化しておくと、行政対応上も有利になりやすい。

管理委託でオペレーションを外部化しても、「名簿が適正に管理されているか」をチェックする目は事業者側に必要です。特に複数物件を展開する事業者にとって、「届出番号ごとの宿泊者名簿・定期報告データをワンクリックで出せる状態」にしておくことが、コンプライアンスと業務効率を守る鍵になります。

宿泊者名簿に関するよくある質問(Q&A)

宿泊者名簿に関するよくある質問(Q&A)

Q. Airbnbなどのプラットフォーム経由の予約でも名簿は必要?

AirbnbやBooking.comなど、どのプラットフォーム経由の予約であっても、宿泊者名簿の作成義務は免除されません。大阪府は次のように明記しています。

「宿泊施設等(注1)は、法令等(注2)の定めにより宿泊者名簿を備え付け、管理しなければなりません」

この「宿泊施設等」には、「旅館・ホテルの他、簡易宿所、特区民泊、住宅宿泊事業を含みます」としています(大阪府「宿泊者名簿の記載徹底について」)。

住宅宿泊事業(いわゆる民泊)についても、奈良県は「旅館業法及び住宅宿泊事業法では、宿泊者名簿の備え付けが義務づけられています」と説明し、

「作成した宿泊者名簿は、3年間保存することとしてください。」

と保存義務まで明記しています(奈良県「宿泊者名簿について」)。

プラットフォーム上で取得できる情報(氏名・国籍・連絡先など)が宿泊者名簿の必要項目を網羅していても、「宿泊者名簿」として自施設・自室単位で整理・保存する作業は別に必要です。実務では、

  • 予約情報をスプレッドシートや名簿システムに転記・連携する
  • 外国人宿泊者についてはパスポート番号・写しを追加する
  • 届出番号(ホテル営業・簡易宿所・住宅宿泊事業番号など)ごとにシートを分ける

といった形で、「プラットフォームの予約管理」と「宿泊者名簿」をきちんと分けて考えると、行政対応もスムーズです。

Q. 宿泊者が名簿への記入を拒否した場合はどうする?

宿泊者が名簿記入を嫌がる場面はありますが、記載事項を欠いたまま宿泊を受け入れることは原則認められません。大阪府は、日本国内に住所を持たない外国人について、

「宿泊者名簿への国籍及び旅券番号の記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存してください。」

としたうえで、

「営業者の求めに対し宿泊者が旅券の呈示を拒む場合は、国の指…」

と、呈示拒否時には国の指導内容に沿った対応が必要になる旨を示しています(大阪府「宿泊者名簿の記載徹底について」・原文は途中省略)。観光庁通知では「宿泊を断ることができる」旨が示されています。

奈良県も、宿泊者名簿は旅館業法・住宅宿泊事業法上の義務と位置づけ、

「宿泊者名簿の備え付けが義務づけられています」

と明示しています(奈良県「宿泊者名簿について」)。名簿作成に協力しない宿泊者を受け入れ続けると、事業者側が法令違反のリスクを負うことになります。

実務上は次のステップで対応するのが現実的です。

  1. 事前案内やハウスルールで「宿泊者名簿の記入が法律上必要である」と明示する
  2. チェックイン時に「テロ防止・感染症対策などを目的とした法定義務」であることを説明する
  3. それでも記入やパスポート呈示を拒否する場合は、宿泊をお断りできる旨を運営ポリシーとして明文化しておく

ゲストとのトラブルを避けるには、予約確定前の段階で「名簿記入は宿泊条件である」と周知しておくことが重要です。

Q. 電子データ(スプレッドシート等)での管理は認められる?

紙の名簿台帳をイメージする事業者も多いですが、現在は電子データでの管理も認められています。大阪府は、

「宿泊者名簿の記載は、宿泊者の自筆での記載が必須とされるものではありません」

とし、「自筆である必要はない」と明言しています(大阪府「宿泊者名簿の記載徹底について」)。タブレット入力や事業者側による代筆、予約システムからの自動反映など、デジタルな記録方法を前提にした解釈といえます。

奈良県は「作成した宿泊者名簿は、3年間保存すること」とだけ定めています(奈良県「宿泊者名簿について」)。紙保存を命じているわけではありません。観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、住宅宿泊事業に関するガイドラインやQ&Aを通じ、電子管理を排除する記載は見当たりません(観光庁「民泊制度ポータルサイト」)。

実務では次のような運用が考えられます。

  • 予約管理システムからCSV出力し、法定項目(氏名・住所・職業・宿泊日・連絡先等)を満たす形に整理する
  • GoogleスプレッドシートやExcelで「宿泊者名簿」フォーマットを作成する
  • 外国人宿泊者のパスポート写しはPDFや画像で保存し、該当行と紐づけて保管する

電子保存でも3年間の保存義務は変わりません。クラウドサービスのアクセス権限管理やバックアップ体制まで含めて整えておく必要があります。

Q. 民泊を廃業した後も名簿を保管する必要がある?

民泊を廃業した後も、一定期間は宿泊者名簿を保管する必要があります。奈良県は、旅館業法と住宅宿泊事業法について、

「旅館業法及び住宅宿泊事業法では、宿泊者名簿の備え付けが義務づけられています。また、作成した宿泊者名簿は、3年間保存することとしてください。」

としています(奈良県「宿泊者名簿について」)。営業継続の有無にかかわらず、「作成した日から3年間」は保存義務が残ると解釈できます。愛媛県も住宅宿泊事業の解説の中で、事業の概要や監督権限を示し、詳細は「観光庁HP」および「民泊制度ポータルサイト」を参照するよう案内しています(愛媛県「住宅宿泊事業について」)。全国的にも同様の扱いと考えてよいでしょう。

したがって民泊を廃業するときは、

  • 廃業届とは別に、「直近3年分の宿泊者名簿」を安全に保管する計画を立てる
  • 紙の名簿は施錠できる場所に保管し、3年経過後にシュレッダー等で廃棄する
  • 電子データは暗号化・パスワード保護したうえでクラウドや外付けストレージに保管し、保存期間満了後に削除する

といった対応が必要になります。自治体によっては、指導や立入検査の実施時期が廃業後になる例も考えられます。「廃業したから名簿もすぐ処分してよい」と考えないほうが安全です。

まとめ

民泊の宿泊者名簿は、テロ対策と感染症対策の観点から法律で義務づけられた重要な帳簿です。記載事項や保存方法を誤ると、行政指導や業務停止命令などのリスクがあります。

この記事では、住宅宿泊事業法・旅館業法・特区民泊ごとの書き方の違い、外国人対応、電子名簿ソフトの活用、定期報告との連携、よくあるミスと対策を整理しました。名簿ルールを正しく理解し仕組み化しておけば、法令遵守と業務効率化を両立しやすくなります。民泊運営に安心して取り組める体制づくりのためにも、宿泊者名簿の運用を一度見直しておくことをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

よくある質問(FAQ)

Q1. 民泊の宿泊者名簿には最低限なにを書けば違反になりませんか?

A. どの制度(住宅宿泊事業法/旅館業法/特区民泊)かで必須項目が少し違います。

代表的には、次のように押さえておけば「最低限」は外しません。

  • 住宅宿泊事業法(いわゆる新法民泊)
  • 氏名
  • 住所
  • 職業
  • 宿泊開始日・宿泊終了日(宿泊日数が分かる形)
  • (外国人で日本国内に住所がない場合)国籍・旅券番号、旅券の写し

  • 旅館業法(簡易宿所・ホテル・旅館)

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先(電話番号やメールアドレス)
  • 宿泊年月日(チェックイン日・チェックアウト日)

  • 特区民泊

  • 氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 滞在期間(チェックイン日・チェックアウト日)

いずれの制度でも、日本国内に住所のない外国人については、

  • 国籍
  • 旅券番号
  • 旅券の写し(コピー/画像データ)

を必ず押さえる必要があります。この記事内の制度別一覧と書き方の章を、自分の物件の制度に当てはめて確認するのがおすすめです。


Q2. 宿泊者名簿は宿泊者本人の手書きでないといけませんか?

A. 手書き(自筆)である必要はありません。事業者側の入力やオンライン入力でも構いません。

自治体の案内では、宿泊者名簿について「宿泊者の自筆での記載が必須ではない」と明記されています。そのため、次のような運用が可能です。

  • 事前のオンラインチェックインフォームでゲスト自身に入力してもらう
  • チェックイン時に口頭で聞いた内容をホストやスタッフが代筆する
  • 予約サイトの情報をベースにして、足りない項目だけ追加で確認・入力する

重要なのは、

  • 法令で求められた項目がすべて揃っていること
  • 誰がいつどの物件に泊まったかが後から分かること

の2点です。タブレットやPCでの電子名簿も問題ありませんが、3年間保存・行政から提示を求められた際にすぐ出せる体制は必須です。


Q3. グループや家族での宿泊は代表者だけ書いてもらえばいいですか?

A. 原則NGです。代表者だけでなく、宿泊者一人ひとりが特定できるように記録する必要があります。

各自治体のガイドラインでは、

  • 「代表者のみの記載は認められない」
  • 「宿泊者一人一人について、宿泊契約ごとに分かるように記載すること」

といった趣旨が繰り返し示されています。

実務的には、次のような形がおすすめです。

  • 宿泊者名簿は「1人=1行」を基本にする
  • 代表者/同行者の区別(種別)を付ける
  • 同じグループには共通の「グループID(予約番号など)」を付けて紐づける

こうしておくことで、

  • 誰がその部屋に滞在していたか
  • 何人グループだったか

を後から正確に追えるようになります。セルフチェックインシステムを使う場合は、「代表者だけ入力して先へ進めるUI」だと違反を誘発するので、全員分入力を必須にする設計が安心です。


Q4. 日本に住所がない外国人ゲストの場合、名簿には何を書き、どこまで確認が必要ですか?

A. 日本国内に住所がない外国人には、通常の項目に加えて「国籍・旅券番号・旅券写し」が必須です。

具体的には次のステップになります。

  1. 住所欄の確認
    住所欄に「東京〜」「大阪〜」など日本国内の住所が書けない/書いていない → 「日本国内に住所を持たない外国人」と判断。

  2. 宿泊者名簿への記載

  3. 氏名(パスポート表記)
  4. 国籍
  5. 住所(国外の住所)
  6. 旅券番号
  7. 宿泊日(期間)

  8. パスポートの現物確認と写し保存

  9. チェックイン時にパスポートを提示してもらう
  10. 顔写真ページを目視で確認(本人一致の確認)
  11. 顔写真ページをコピーまたは撮影し、画像データとして保存

  12. 保存

  13. 宿泊者名簿と紐づく形で、3年間保管

多くの自治体は、「旅券写しがあれば、名簿上の氏名・国籍・旅券番号の記載を省略しても可」としていますが、「写しの保存」自体は必須と考えて運用するのが安全です。


Q5. 宿泊者名簿はどこに・どれくらいの期間保管すればよいですか?クラウド保存でも大丈夫?

A. 原則3年間保存が必要で、届出住宅か営業所・事務所で所在を明確にしておく必要があります。クラウド保存も条件を満たせば可能です。

共通的なルールは次のとおりです。

  • 保存期間:記載の日(または宿泊終了日)から3年間
  • 保存場所の原則
  • 届出住宅(実際に民泊をしている物件)
  • または事業者の営業所・事務所
    いずれかで「どこにあるか」を行政へ説明できる状態にしておく

紙でも電子でも構いませんが、電子保存の場合は次を満たす必要があります。

  • 法定の記載項目がすべて揃っていること
  • 3年間、閲覧・印刷できる形式で残っていること
  • 不正な改ざんや消去を防ぐための管理(アクセス権限・バックアップなど)をしていること

クラウド(Googleスプレッドシート、クラウドストレージなど)での保存も実務上広く行われていますが、

  • アカウント管理(退職者や外部委託先への不要な権限付与をしない)
  • 定期バックアップ(ローカルへのエクスポートなど)

をルール化しておくと、監査やトラブル時にも安心です。


Q6. 民泊をやめる(廃業する)予定ですが、その時点で宿泊者名簿はすぐ捨ててもいいですか?

A. 廃業後も、作成済みの宿泊者名簿は「3年間」は保管しておくのが原則です。

各自治体の案内では、旅館業法・住宅宿泊事業法ともに、

  • 「宿泊者名簿を3年間保存すること」

が明記されています。これは営業継続とは切り離された義務と理解されており、廃業しても保存期間が残っている名簿を即時廃棄すると、後からの照会・調査に応じられないリスクがあります。

廃業時の対応としては、

  • 廃業届とは別に、「直近3年分の宿泊者名簿」を一覧にして所在を明確にしておく
  • 紙名簿は施錠できる場所に保管し、保存期間経過後にシュレッダー等で廃棄
  • 電子データは暗号化・パスワード保護し、3年経過後に完全削除

といった形で、「3年間だけ安全に保持し、その後は確実に処分する」計画を立てておくとよいでしょう。