民泊運営では、予約が入りやすい繁忙期よりも、需要が落ちる閑散期で収益力の差が出ると言われます。1〜2月や6月など、どうしても埋まらない月が続くと、値下げだけで乗り切ろうとしがちです。しかし、その発想だけでは年間収益は頭打ちになります。
本記事では、観光庁データなどをもとに閑散期の構造を整理し、価格戦略・OTA対策・ニッチ需要の開拓・コンテンツ作りなど、民泊の収益最大化につながる具体的な集客対策を体系的に解説します。これから民泊を始める方も、すでに運営中で稼働率に悩んでいる方も、年間を通じて安定した収益を確保するための実践的なヒントを得られる内容です。
民泊の閑散期とは?需要が落ちる時期と主な原因

閑散期の定義と一般的な時期(1月下旬〜2月・6月・9月中旬など)
民泊における「閑散期」は、繁忙期と比べ予約が入りづらく、稼働率と客単価(ADR)が同時に落ち込む時期を指すことが多いといえます。観光庁「宿泊旅行統計調査」でも、宿泊需要には明確な季節変動があるとされており、客室稼働率の月別データを見ると
1〜2月、6月、9月は年間平均を下回る傾向が強い
ことが確認できます(観光庁「宿泊旅行統計調査」月別客室稼働率)。この傾向はホテル・旅館だけでなく、民泊でもおおむね同様です。
一般的な都市部・観光地の民泊で需要が落ちやすいとされるのは、次のような時期です。
- 1月下旬〜2月:正月休み明けで旅行需要が急に冷え込む
- 6月(梅雨時期):祝日がなく天候も悪く、国内旅行が全体的に低調
- 9月中旬〜10月上旬:シルバーウィークがない年や大型連休の谷間
観光系コンサルティング会社のアビリブも、ホテル・旅館向けの記事で1〜2月の冬シーズンを「冬の閑散期」としたうえで、卒業旅行需要の前後で稼働が落ちると説明しています(アビリブ「【ホテル・旅館】卒業旅行・学生旅行シーズン!冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。民泊も同じ構造になりやすく、
正月や連休で一時的に上がった稼働が、連休明けに急激に落ちる
という波を前提に、価格や販促を組み立てる必要があります。
都市型民泊 vs リゾート型民泊で異なる閑散期の構造
一方で、いつが閑散期になるかは、立地とターゲットによって大きく変わります。観光庁の統計でも、ビジネス比率の高いシティホテルと、観光・レジャー比率の高いリゾートホテルとで、稼働率の山と谷が異なることが示されています(観光庁「宿泊旅行統計調査」施設タイプ別客室稼働率)。この構造は民泊でも同じです。
都市型民泊(ビジネス・イベント需要が中心)
東京・大阪・名古屋などの都市型民泊は、次のような需要に強く依存します。
- 平日のビジネス出張
- 学会・ライブ・展示会などのイベント
このため、閑散期は主に以下のタイミングで発生しやすくなります。
- 大型連休明けの平日:ゴールデンウィーク明け、年末年始明けなど
- 決算期や年度末・年度初めの谷間:3月末〜4月前半は出張を控える企業が増える
- 大学の試験期間・就活シーズン:学生の移動が減る時期
シティホテルやビジネスホテルの客室稼働率が落ちる週は、同じエリアの民泊もほぼ同じように影響を受けます。観光庁データで自分のエリアの「ビジネスタイプ」の宿泊施設の稼働推移を確認しておくと、民泊の波を読みやすくなります。
リゾート型民泊(観光・季節需要が中心)
沖縄・北海道・軽井沢・スキーエリアなどのリゾート型民泊は、次のような要素と強く連動します。
- 海・スキーなどの季節レジャー
- 夏休み・年末年始・お盆など長期休暇
観光庁の宿泊統計では、リゾート地の客室稼働率に次のようなパターンが見られます(施設所在地別・月別客室稼働率)。
夏季(7〜8月)と冬季(スキーシーズン)にピークがあり、春・秋に谷ができる
このためリゾート民泊では、次のような時期が閑散期になりやすいと考えられます。
- 春先(4〜6月):春休み終了〜梅雨入り前後
- 夏休み明け〜秋口(9〜10月):お盆明けの需要落ち込み
海水浴やスキー場の営業期間に合わせて、
- オフシーズンはほぼ完全な閑散期になる
ケースも多く、都市型民泊より季節による収益差が大きくなりやすい点が特徴です。
台風・梅雨・受験シーズンなど特殊要因による需要減
年間パターンとは別に、特定の月や週だけ急に予約が鈍るケースもあります。背景として、天候や社会イベントといった特殊要因を押さえておく必要があります。ホテル・旅館業界向けコンサルティング記事でも、閑散期対策と合わせて次のような要因が繰り返し挙げられています(アビリブ前掲記事など)。
梅雨・台風などの天候要因
観光庁の統計では、6月の客室稼働率が年間最低水準となる年が多く、
梅雨入りによる旅行控え
が一因とされています(観光庁「宿泊旅行統計調査」月別推移)。民泊でも、屋外観光やドライブが主目的のエリアほど、梅雨・台風シーズンの影響を受けやすくなります。
特にリゾート地では次のような動きが出やすくなります。
- 台風予報が出ると直前キャンセルが急増
- 数週間先の需要見通しも一気に弱くなる
このため、価格設定やキャンセルポリシーに天候リスクを織り込むことが重要です。
受験シーズン・学校行事の影響
1〜3月の受験シーズンは、一見すると移動需要がありそうに見えます。ただ実際には次のような特徴があります。
- 受験生を持つ家庭が旅行を控える
- 卒業旅行は2〜3月の特定期間に集中し、それ以外の週は需要が薄い
アビリブも、卒業旅行・学生旅行のピークに照準を合わせた施策を提案する一方で、それ以外の冬期間を「閑散期」と位置づけています。この期間は、
- 平日ビジネス需要が弱い都市部
- ファミリー比率の高いリゾート
で特に稼働率が落ちやすく、料金や最低泊数の調整が欠かせません。
イベントの有無・大型連休の配置
観光庁の宿泊統計を月別・地域別に見ると、
同じ月でも、祝日の並びや大型イベントの有無で稼働率が大きく変わる
ことが分かります。シルバーウィークの有無で、9月の客室稼働率に明確な差が出ている年もあります(観光庁「宿泊旅行統計調査」2015年・2016年の比較など)。
民泊の場合も、次のようなイベントの有無で波が生じます。
- 地元の花火大会・フェス・スポーツ大会
- 国際会議・展示会
これにより、
- ある週は満室・高単価
- その前後の週は閑散期水準
という山谷が生まれます。したがって、年間の平均的な閑散期(1〜2月、6月、9月中旬)を押さえたうえで、次の二つを照らし合わせると、自施設特有の「本当の閑散期」を把握しやすくなります。
- 自エリアのイベントカレンダー
- 観光庁など公的統計の月別稼働率
この確認が、収益最大化の第一歩です。
民泊の閑散期における稼働率の実態データ

観光庁データが示す簡易宿所の平均稼働率(約30%)の意味
民泊の稼働率の現実を、公的データから押さえておく必要があります。
観光庁が公表している「宿泊旅行統計調査(2025年速報値)」では、ホテル・旅館・簡易宿所など施設タイプ別の客室稼働率を毎月公表しています。このうち民泊に最も近いカテゴリーである「簡易宿所」の全国平均を見ると、直近数年はおおむね次の水準です。
簡易宿所の客室稼働率は、年間平均で 29〜30%前後
(観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年速報値・施設タイプ別客室稼働率)
これは繁忙期や週末も含めた年間の平均値です。東京や主要観光地の好立地物件も、地方の小規模施設もすべて含めた数字になります。
この数字を民泊運営の感覚に引き直すと、次のように考えられます。
- 年間を通した平均的な埋まり具合は3割程度
- 毎日埋まる前提で収支シミュレーションを組むと、現実とのギャップが大きくなる
閑散期は、この平均値を大きく下回ることも珍しくありません。したがって、次のような視点を持つ必要があります。
- 閑散期だから2〜3割でも妥当なのか
- 立地や商品力から見て、もっと取れてよいはずなのに取れていないのか
この見極めの基準として、公的統計の水準を頭に入れておくことが重要です。
観光庁の同調査では、月別・地域別の客室稼働率も公表されています。1〜2月の閑散期には、簡易宿所の稼働率が20%台前半まで落ち込む地域もあります。
繁忙期の満室続きだけを前提にした収支計画は、統計データと乖離している可能性が高い
といえます。閑散期対策を検討する際は、まず「全体の平均が3割前後」という土台を押さえ、そのうえで自施設の位置を把握することが出発点です。
民泊新法届出住宅の月間宿泊日数は平均9日前後という現実
住宅宿泊事業(いわゆる民泊新法)の届出住宅については、観光庁が別途「住宅宿泊事業における宿泊実績」を公表しています。令和8年2〜3月分の資料では、届出住宅1件あたりの平均宿泊日数について次のように記載されています。
住宅宿泊事業届出住宅1件あたりの宿泊日数は、2か月合計で 17.2日
(観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績(令和8年2月〜3月分)」)
2か月で17.2日なので、1か月あたりに直すとおよそ 8.6日(=約9日) です。民泊新法では営業日数の上限が年間180日とされています。単純平均すると次のような水準です。
- 1か月30日換算で、約9日しか泊まっていない
- 稼働率に換算すると30%強程度
全国すべての届出住宅を平均した数字になるため、運営の手応えより少なく感じる方もいるかもしれません。都市部で高稼働の物件がある一方で、次のような物件も含まれます。
- ほとんど稼働していない届出住宅
- 季節限定・週末限定でしか営業していない物件
その結果として、平均は「月9日前後」に落ち着いていると読み取れます。
重要なのは、観光庁自身が公表している一次データから、
民泊新法の届出住宅は、毎月ほぼ満室というより、月の3分の1程度しか実際には泊まっていない
という実態が見える点です。閑散期はこの平均を下回るケースも多くなります。そのため次のようなギャップに悩む事業者も少なくありません。
- 想定稼働率を50〜60%と置いていた収支計画
- 実際の平均が30%前後にとどまる現実
閑散期の集客対策を考える際は、まず「全国平均はこの程度」という前提を冷静に受け止める必要があります。そのうえで、自施設の改善余地を探る姿勢が欠かせません。
稼働率・ADR・RevPARをセットで見ないと値下げ罠にはまる
閑散期に入ると、多くの民泊で最初に検討されるのが値下げです。ただ、稼働率だけを追いかけると、結果として収益を落とすケースも多くなります。
収益管理の基本指標として、ホテル業界では次の指標を使います。
- ADR(Average Daily Rate:平均客室単価)
- RevPAR(Revenue Per Available Room:販売可能客室1室あたり売上)
RevPARは、次の式で表せます。
RevPAR = ADR × 稼働率
例えば、次の二つのパターンを比較すると、値下げの罠が見えやすくなります。
| パターン | 1泊単価(ADR) | 稼働率 | RevPAR(1室あたり売上) |
|---|---|---|---|
| A:値下げ前 | 20,000円 | 30% | 6,000円(=20,000×0.3) |
| B:値下げ後 | 15,000円 | 40% | 6,000円(=15,000×0.4) |
パターンBは稼働率が30%から40%に改善しています。ただ、RevPARはどちらも6,000円で、収益は実質的に変わりません。さらに次のような要素を考える必要があります。
- 掃除回数が増える
- リネン費や光熱費など変動費がかさむ
このため、値下げ後のほうが手残りが減る可能性もあります。
閑散期の収益最大化を考えるときは、次の視点が欠かせません。
- 観光庁データが示す平均的な稼働率30%前後を前提にする
- 自施設のADRと稼働率のバランスを併せて見る
- RevPARが最大化する価格帯を探る
「あと10%稼働を上げたいから、単価を20%下げる」といった発想では、RevPARが下がり、閑散期全体の売上・利益を削るおそれがあります。
観光庁の宿泊旅行統計調査では、月別の客室稼働率とともに宿泊料金水準(客室単価)の動きも把握できます。公的統計を見ると、
閑散期でも、大幅な値崩れが起きていない地域が多い
ことが分かります。これは次のような施設が一定数存在する裏返しです。
- 値下げよりも最低泊数やプラン構成で収益を守っている施設
- ターゲットを変えることで単価を維持している施設
したがって、閑散期の「集客対策=値下げ」という発想から離れる必要があります。代わりに次のような手順を踏むことが重要です。
- 公的統計で自エリアの稼働率水準を把握する
- 自施設の稼働率・ADR・RevPARを定点観測する
- 値下げ前後でRevPARと利益がどう変わるかシミュレーションする
観光庁データが示す「平均3割前後」という現実を踏まえ、数字で判断する習慣を持てば、閑散期の戦略を誤りにくくなります。
閑散期の集客対策①:価格戦略とダイナミックプライシング

閑散期に「ただ値下げ」するだけでは収益が下がる理由
閑散期に予約が落ちると、「値下げしてでも埋めたい」と考えがちです。ただ前のセクションで触れた通り、収益のカギは「客室1室あたり売上高」であるRevPARです。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」では、客室稼働率とあわせて、1人1泊あたりの料金水準も毎月公表されています。この統計を月別に追うと、
閑散期でも、料金が大きく崩れていないエリアや宿泊タイプが多い
ことが分かります(観光庁「宿泊旅行統計調査」月次集計)。稼働の落ち込みに対して、極端な安売りではなく販売方法の工夫で対応している事業者も多いと考えられます。
タビルモが公開している「民泊の稼働率はどれくらい?平均・計算方法・上げる方法を解説」でも、
値下げに頼る前に、露出・写真・ページ内容・料金設計など、ボトルネックを切り分けることが重要
と説明しています。単価を20%下げても、稼働が10%しか上がらなければRevPARは確実に低下します。清掃コストや光熱費はほぼ変わらないため、利益はむしろ圧迫されます。
このため閑散期は、「どこまで単価を守り、どこで柔軟に下げるか」を数字で管理しながら価格戦略を組み立てる必要があります。
ダイナミックプライシングで需要に応じた価格を自動設定する
こうした「守るところと攻めるところ」の両立に役立つのが、ダイナミックプライシングです。需要に応じて料金を自動で変動させる仕組みで、航空券やホテルで広く使われています。Airbnb などのプラットフォームにも「スマートプライシング」といった名称で組み込まれています。
需要予測、エリアのイベント情報、競合料金などをもとに、日ごとの料金を自動算出する機能
として案内されています(Airbnb公式ヘルプセンター「スマートプライシング」)。
民泊専門メディアのタビルモは、ダイナミックプライシング導入の流れを概ね次の4ステップで整理しています。
- 自施設の過去データ(稼働率・平均単価・RevPAR)を把握する
- エリア内の競合施設と料金レンジを調査する
- ダイナミックプライシングツールやOTAの自動料金機能を設定する
- 運用開始後、実績を見ながらルール(最低価格・上限価格など)を見直す
ツールを入れたら終わりではありません。自施設の基準値を持ったうえで使う必要があります。観光庁の統計やOTAの料金比較機能を活用し、次の点を押さえたうえで価格の自動変動幅を決めましょう。
- エリアの平均稼働率・料金水準
- 自施設の強み(立地・設備・最大定員など)
最低価格・最高価格の初期設定と定期的な効果測定のポイント
ダイナミックプライシングで失敗しやすいのが、AI任せにしてしまい、価格が乱高下するケースです。Airbnb のスマートプライシングについても、
ホスト自身が最低価格を設定し、必要に応じてオフにできる
と公式ヘルプで明記されています。最終決定権はあくまでホスト側にあると意識しましょう。
民泊で初期設定する際のポイントは、次の3点です。
-
最低価格(フロア価格)
清掃費・光熱費・消耗品・プラットフォーム手数料を踏まえ、「ここを下回ると赤字になる」ラインを明確に決めます。観光庁の統計でエリアの平均単価を把握しながら、原価と照らし合わせて設定すると現実的です。 -
最高価格(シーリング価格)
繁忙期やイベント時に、地域相場から大きく外れる高値にならないよう、上限も決めておきます。タビルモの記事でも、極端な高値設定は「短期的に売上が上がっても、レビューや再訪率の低下につながりやすい」と注意を促しています。 -
週次・月次での効果測定
ダイナミックプライシング導入前後で、稼働率・平均単価・RevPARを比較します。観光庁の宿泊旅行統計では全国・都道府県レベルの平均値が把握できます。自施設の数字と合わせて「エリア平均よりどれくらい上か下か」を見ると、戦略の方向性を判断しやすくなります。
最低価格・最高価格は、一度決めたら終わりではありません。シーズンごとや物価動向に合わせて見直す前提で運用する必要があります。
閑散期限定の連泊割引・長期滞在プランで稼働日数を伸ばす
価格戦略で収益を最大化するには、「1泊あたりの単価」だけでなく、「1件あたりの宿泊日数」も意識する必要があります。観光庁の統計や各種旅行調査では、ワーケーションや長期滞在需要の広がりが指摘されています。
平日や閑散期に、長めに滞在したい層が一定数存在する
ことが示されています(観光庁「新たな旅のスタイルに関する調査」など)。この層を取り込めば、1件あたりの売上と稼働日数を同時に伸ばせます。
具体的な施策として、次のようなものが考えられます。
-
連泊割引(例:3泊以上で10%オフ、7泊以上で15%オフ)
単価はやや下がっても、清掃回数が減るため、1泊あたりの利益は改善するケースが多くなります。 -
長期滞在プラン(30泊以上のマンスリープランなど)
閑散期の空室リスクを安定した固定収入に変える発想です。プラットフォームによっては、月単位の料金表示や長期割引機能が用意されています。 -
最低宿泊数の緩和(平日・閑散期のみ1泊から受付)
通常は2泊以上としている施設でも、需要が落ちる曜日や期間だけ最低宿泊数を下げると、スキマ日の埋まり方が変わります。 -
平日限定プラン(ワーケーション・ワーケーション+観光など)
Wi-Fi速度やワークスペース、コンビニ・飲食店へのアクセスなど、働きやすさを明示し、平日滞在を訴求します。
and-villa や tocoro などの民泊・貸別荘運営事業者も、自社サイトやブログで次のような戦略を紹介しています。
閑散期は連泊割引や長期滞在プランを組み合わせ、稼働日数を確保しながら1日あたりの収益を最適化する
1泊単価だけにこだわらず、次の点まで含めてトータルの利益を見ていくことが大切です。
- 1件あたり売上(滞在日数×1泊単価)
- 清掃回数や作業負担
日ごとの価格をダイナミックプライシングで最適化しつつ、連泊・長期滞在プランで「まとめて埋める」視点を取り入れましょう。RevPARと利益の両方を守りながら、閑散期の集客を安定させやすくなります。
閑散期の集客対策②:OTA掲載チャネルの拡大と露出強化

1媒体依存が閑散期の稼働を底抜けさせる構造的リスク
閑散期は、需要そのものが少なくなります。1つのOTAだけに頼っていると、掲載順位が少し落ちただけで予約が一気に止まりやすくなります。
民泊・貸別荘専門OTAであるタビルモは、稼働率が低い施設の共通点として次の点を最初のチェックポイントに挙げています(「民泊の稼働率はどれくらい?平均・計算方法・上げる方法を解説」)。
そもそも検索結果に表示されていない/表示回数が極端に少ない
繁忙期は放っておいても検索されますが、閑散期は検索母数が減ります。露出する場所そのものを増やさないと、土俵に上がることすら難しくなります。
ホテル・旅館向けコンサルティングを行うアビリブも、冬の閑散期対策として国内外OTAを組み合わせて集客経路を増やす重要性を強調しています。
国内OTAだけでなく海外OTAや自社サイト、SNSなど複数チャネルを活用し、露出機会を最大化することが重要
と解説しています(「【ホテル・旅館】卒業旅行・学生旅行シーズン!冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。民泊でも同じ発想が有効です。「1媒体で勝つ」より「複数媒体で確実に見つけてもらう」ほうが、閑散期の底抜け防止につながります。
大手OTAと一棟貸し専門OTAを併用して予約母数を増やす
掲載チャネルを増やす際は、むやみに増やすより役割分担を意識したほうが効率的です。例えば次のような構成が現実的です。
-
大手グローバルOTA(Airbnb・Booking.com など)
検索ボリュームが多く、インバウンドを含む広い間口を確保する役割。 -
国内OTA(じゃらんnet・楽天トラベル 等、簡易宿所登録済みなら検討)
国内旅行者・家族利用・車移動客など、日本人の定番ルートを取り込む役割。 -
一棟貸し・民泊専門OTA(タビルモ、tocoroパートナーズ提携サイト など)
貸別荘・一棟貸しを探すニッチだが成約率の高い層を狙う役割。
タビルモは自社メディアで、
一棟貸し専門OTAとして、貸別荘・民泊を探すユーザーだけに絞った集客を行っている
と述べています(前掲記事)。大手OTAでは埋もれがちな施設でも、ニーズの合うユーザーの前に出やすいのが特長です。
AirbnbやBooking.com のような大手は検索トラフィックが圧倒的です。母数を稼ぐ媒体と成約率の高い専門媒体をセットで運用すれば、閑散期でも安定した問い合わせを得やすくなります。
アビリブはホテル向け事例の中で、
国内外の複数OTAを活用しながら、自社サイトへの送客も並行して行うことが、中長期的な収益最大化につながる
とも指摘しています(前掲記事)。民泊でも同様で、将来的には自社サイト直予約を育てるほうが手数料を抑えやすくなります。OTAは露出と信頼を獲得するためのフロントエンドと捉えると運用方針を決めやすくなります。
写真・施設ページ・説明文の改善で転換率を上げる
チャネルを増やした後は、各OTA内でどれだけ予約につながっているかを分解して確認します。タビルモは、稼働率が低い施設の原因を切り分けるフレームとして、次の4段階を紹介しています(前掲記事)。
- 検索結果に表示されているか(露出)
- 一覧からクリックされているか(1枚目の写真)
- 施設ページで予約に至っているか(転換率)
- 料金・在庫・キャンセルでロスが出ていないか
このうち、2と3の「クリック」と「転換率」は、写真と説明文の改善で大きく変えられます。
改善の方向性として次のような点が挙げられます。
-
1枚目の写真を「部屋全体が伝わる明るいカット」にする
タビルモは一覧からのクリック率を見る際、「1枚目の写真の訴求力」を重視しています。外観の夜景や装飾よりも、「どんな部屋で過ごすか」が一目で分かる写真のほうがクリックされやすい傾向があります。 -
説明文で「誰に向けた宿か」を明確に書く
ゲストハウス開業を解説する専門記事でも、ターゲット(バックパッカー・家族・ワーケーション客など)をはっきりさせる重要性が繰り返し説明されています(「ゲストハウスの開業|簡易宿所と民泊新法の選び方・開業資金・許認可・集客」)。OTAの説明文も同じ発想で、「最大◯名OK」だけでなく、「3世代旅行向け」「友人グループの合宿向け」「リモートワーク向け」など用途を具体的に書くと予約につながりやすくなります。 -
設備・立地情報を“仕事目線”と“観光目線”の両方で整理する
ワーケーション需要や学生旅行を取り込む事例として、アビリブは「Wi-Fiやワークスペース、アクセス情報を分かりやすく伝える」ことを提案しています(前掲記事)。民泊でも、通信速度・コンセントの数・最寄り駅からのルート・スーパーやコンビニまでの距離などをOTAページに具体的に記載すると、安心感につながります。 -
最低宿泊数・キャンセル規定の設定ミスを見直す
タビルモは、稼働率の分析ポイントとして「予約が入った日数と、実際に泊まった日数は違う」ことに注意を促しています。キャンセルや在庫設定の見直しを推奨し、閑散期だけ最低宿泊数を1泊に下げる、直前の空室はキャンセルポリシーを柔軟にするといった調整で、スキマ日が埋まるケースも多いと説明しています(前掲記事)。
OTAチャネルの拡大は、露出と母数を増やす施策です。その効果を高めるには、露出 → クリック → 転換 → キャンセルという流れの各段階でボトルネックを見つけ、写真・説明文・条件設定を改善する必要があります。複数OTAで同じ改善を横展開すれば、閑散期でも予約を積み上げやすくなります。
閑散期の集客対策③:ターゲット客層の多様化とニッチ需要の開拓

閑散期に同じ客層だけを追い続けると、価格勝負になりやすく収益性が落ちます。観光庁の宿泊旅行統計でも、国内宿泊需要は季節変動が大きい一方で、ビジネス・長期滞在・インバウンドなどの需要は比較的安定していると示されています(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。そこで、ターゲットを多様化し、ニッチな需要を組み合わせて底上げする発想が重要です。
民泊・簡易宿所のコンサルティングを行うアビリブも、冬の閑散期対策として「学生旅行」「法人利用」「中長期滞在」など、従来の観光客とは異なるセグメントを意識的に取り込むことを提案しています(アビリブ「【ホテル・旅館】卒業旅行・学生旅行シーズン!冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。民泊でも同じ発想を応用し、ワーケーション・サブスク滞在、法人・ビジネス利用、学生旅行、インバウンドの4つのニッチを組み合わせて、閑散期の収益最大化を目指す戦略が有効です。
ワーケーション・サブスク滞在プランで平日需要を創出する
観光庁が2020年に公表した「新たな旅のスタイル(ワーケーション等)」では、テレワークの普及を背景に、地方で仕事と休暇を組み合わせるワーケーションが新たな旅行需要として示されています(観光庁「新たな旅のスタイル」)。
平日に移動して長めに滞在するワーケーション層は、民泊にとって平日を埋める安定需要になり得ます。この層を狙う際のポイントは次の通りです。
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最低3泊以上の割安なワーケーションプランを設定する
住宅宿泊事業は連泊になるほど清掃コストの比率が下がります。1泊あたり単価を少し下げても、トータル収益が改善しやすくなります。平日3〜5泊を対象にワーケーション割を設定すれば、週末だけ予約が入る状況をならしやすくなります。 -
仕事環境を具体的に訴求する
観光庁はワーケーション促進にあたり、Wi-Fi環境や作業スペースの整備を重視事項として挙げています(同資料)。民泊でも、「Wi-Fi完備」と書くだけでは不十分です。回線速度の目安(例:下り◯◯Mbps)、デスク・チェアの写真、電源タップの数などを掲載すると、ワーケーション層の不安を減らせます。 -
サブスク型・定額滞在の受け皿になる
定額で複数拠点を回遊できる多拠点サブスクサービスも増えています。こうしたサービスと提携している宿は、平日の稼働が安定しやすくなります。自前でサブスクを設計するのが難しい場合でも、1〜2週間単位の定額ロングステイプランをOTA上で設定し、説明文に「リモートワーク歓迎」「ワーケーション長期割引」などのキーワードを盛り込めば検索に引っ掛かりやすくなります。
法人・ビジネス利用者へのアプローチで安定収益を確保する
観光庁の統計によると、ビジネス目的の宿泊はレジャー需要に比べ季節変動が小さく、平日利用が中心です(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。民泊の稼働率向上策を解説するタビルモも、「観光需要だけでなく、法人利用や長期出張を取り込むと稼働が安定しやすい」と指摘しています(タビルモ「民泊の稼働率はどれくらい?平均・計算方法・上げる方法を解説」)。
民泊で法人需要を取り込むためには、次の工夫が有効です。
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「出張向け」「研修合宿向け」など用途を明示したプランを作る
単に価格を下げるより、「社内研修・合宿歓迎」「プロジェクトチームの短期滞在向け」など用途をはっきりさせたほうが、法人担当者の検討テーブルに乗りやすくなります。会議用テーブル、ホワイトボード、プロジェクターなどを備えれば、一般的な観光民泊との差別化にもつながります。 -
請求書払い・領収書発行に柔軟に対応する
法人はクレジットカード決済以外に請求書払いを希望するケースも増えています。OTA経由では制約がありますが、自社サイトからの直接予約では「法人向け請求書対応プラン」を用意しておくと、リピートにつながりやすくなります。 -
近隣企業・工事現場・大学などに直接アプローチする
中長期の出張やプロジェクトで、まとめて部屋を確保したいニーズは少なくありません。近隣に工業団地や大型の建設現場、大学・研究機関などがある場合は、「長期出張者向け宿泊先のご提案」としてメールやDMを送付する方法もあります。アビリブも、学生団体や企業との直接取引は閑散期対策として有効と述べています(前掲アビリブ記事)。
学生・卒業旅行シーズン(2〜3月)を閑散期対策に活用する
民泊やホテルにとって、2〜3月は一般的には冬の閑散期に当たります。ただ同時に、卒業旅行・学生旅行のピークでもあります。
マイナビが実施した大学生の卒業旅行調査によると、大学生の春休み期間はおよそ2か月と長く、そのうち2〜3月に旅行を計画する割合が高いと分かっています(マイナビ「大学生の卒業旅行に関する調査」)。同調査では次の傾向も示されています。
- 2〜4人程度の小グループ旅行が中心
- 情報収集は「SNS」「口コミサイト」「旅行予約サイト」が多い
- 宿選びで重視するのは「価格」「立地」「部屋の広さ・きれいさ」
アビリブは前掲記事の中で、冬の閑散期対策として「学生旅行プラン」を打ち出すことを推奨しています。具体的には「学割」「連泊割」「夕食付きBBQプラン」など、価格と体験価値の両方を訴求する方法を紹介しています。民泊でも、次のようなポイントを押さえるとよいでしょう。
-
2〜4人グループを想定した料金設計にする
単価を上げるより「1人あたり◯◯円〜」と分かりやすく提示し、人数が増えるほどお得になる料金体系にすると学生に受け入れられやすくなります。 -
「映える体験」「思い出づくり」を意識した演出を用意する
マイナビ調査でも、宿泊先選びの情報源としてSNSが上位に挙がっています。写真映えする空間やアクティビティは拡散につながります。フォトスポットになる小物、卒業旅行専用のウェルカムボード、メッセージカードなど、原価の小さい工夫でも満足度を高めやすくなります。 -
2〜3月限定の「卒業旅行」「追いコン」プラン名で露出を増やす
OTAのプラン名・説明文・タグに「卒業旅行」「学生旅行」「春休み」などのワードを入れておくと、シーズン中の検索でヒットしやすくなります。タビルモが指摘するように、「露出 → クリック → 成約」の各段階を意識してページを整えることが、稼働率アップには欠かせません(前掲タビルモ記事)。
インバウンド需要を閑散期の底上げに取り込む方法
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日外国人の旅行時期は日本人の国内旅行シーズンと必ずしも一致していません。国・地域によってバラつきがあります(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)。
例えば、旧正月に合わせて1〜2月に訪日する東アジア圏の旅行者や、欧米の長期休暇を利用してオフシーズンに来日する層もいます。こうしたインバウンド需要を取り込めば、日本人の閑散期をある程度補えます。
インバウンドを閑散期の底上げ要因にするためには、次の施策が考えられます。
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多言語対応の基本整備
アビリブはインバウンド対策として、多言語サイトや翻訳ツールの導入を推奨しています(アビリブ「インバウンド対策」)。民泊でも英語を中心に、チェックイン方法・ハウスルール・周辺案内などの翻訳を用意しておくと安心感が高まります。OTAの自動翻訳に任せきりにせず、重要な部分は自前でチェックしたいところです。 -
インバウンドに強いOTA・メタサーチへの掲載
AirbnbやBooking.comに加え、アジア圏に強いOTAを活用すると訪日客の目に触れる機会が増えます。タビルモも、民泊の稼働率を上げる方法として「複数OTAへの掲載で露出の母数を増やす」重要性を挙げています(前掲タビルモ記事)。インバウンド比率を高めたい施設は海外OTAへの登録も検討したいところです。 -
「体験コンテンツ」とのセット売りで単価アップを狙う
訪日客は「日本ならではの体験」に価値を感じやすく、観光庁の調査でも訪日前に期待していたこととして「日本食」「自然・景観」「日本の歴史・伝統文化」などが上位に挙がっています(観光庁「訪日外国人消費動向調査」)。近隣の観光事業者と連携し、茶道・着物・サイクリングツアーなどを組み合わせた宿泊プランを用意すれば、単価アップと差別化につながります。
このように、ワーケーション・法人利用・学生旅行・インバウンドといったニッチ需要を組み合わせることで、閑散期の稼働率と客室単価の両方を底上げできます。観光庁やマイナビ、タビルモ、アビリブといった一次情報が示すトレンドを踏まえ、自施設の立地や設備に合ったターゲットを選び、プラン設計と情報発信を丁寧に行うことが、長期的な収益最大化への近道です。
閑散期の集客対策④:物件の「強み」を季節限定コンテンツに変える

「閑散期の弱点」を「季節限定の魅力」に転換する発想法
閑散期は、単に需要が少ない時期ではありません。その季節にしか打ち出せない価値がある時期とも捉えられます。価格勝負に走る前に、自施設の強みと季節を掛け合わせ、「この時期だからこそ泊まりたい理由」を設計したいところです。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」では、訪日前に期待していたこととして「日本食を食べること」「温泉入浴」「自然・景観観光」が常に上位に入っています(観光庁『訪日外国人消費動向調査』)。「紅葉や雪景色を見る」といった季節要素もニーズとして繰り返し挙げられています。季節限定コンテンツが旅行動機になり得ると分かります。
次のような既存の資産を、季節で切り直すイメージです。
- 湖や海、山などの景観
- 庭やウッドデッキ、焚き火スペース
- サウナ・露天風呂・暖炉などの設備
ポイントは、弱点をそのままにしないことです。例えば次のように考え方を変えられます。
- 冬は寒くて水辺のアクティビティが減る →「静かな冬景色×サウナ・焚き火」の滞在価値に転換
- 梅雨は屋外観光がしづらい →「雨音を楽しむ読書・映画・ボードゲームの館」に転換
プラン名・写真・説明文に落とし込めば、「この季節だからこそ」の訴求に変えられます。
冬のサウナ・焚き火・雪景色など寒さを武器にした事例
冬の水辺リゾートは、一般的にはオフシーズンと見なされがちです。ただ発想次第で高稼働を実現できます。
民泊・貸別荘の運営支援を行うLDKプロジェクトは、自社のnoteで「冬の琵琶湖でも稼働率79%超」という事例を紹介しています(LDKプロジェクト『【実績公開】真冬の琵琶湖で稼働率79%。サウナ付き貸別荘の“寒さを武器にする”集客戦略』)。
この事例では、次の三つの戦略で、1〜2月の閑散期にあたる時期の稼働率を79%超まで引き上げています。
- サウナを核にした「冬限定コンテンツ」の設計
- 湖畔の焚き火・冬景色を組み合わせた写真・動画の発信
- OTAに頼りきらない、SNS中心の直予約導線
「寒さをマイナスではなく、『サウナでととのうには最高の条件』と位置づけ直した」点が特徴とされています(前掲LDKプロジェクトnote)。
この発想は他のエリアにも応用できます。
- 雪が積もる地域 →「雪見風呂」「雪遊び」「かまくらBBQ」など雪を主役にしたコンテンツ
- 山間部の冷え込みが厳しい地域 →「星空観賞×薪ストーブ」「冬キャンプ気分が味わえる貸別荘」
といった形で、「寒い=行きたくない」ではなく「寒いからこそ楽しめる体験」を前面に打ち出す形です。
観光庁の旅行・観光消費動向調査でも、宿泊旅行の目的として「温泉・露天風呂」「自然鑑賞」は年代を問わず上位にあります(観光庁『旅行・観光消費動向調査』)。冬のサウナ・温泉・焚き火といった体験価値との相性が良いと言えます。
梅雨・秋雨シーズンに響く「雨の日コンテンツ」の作り方
梅雨や秋雨シーズンは、外出しづらい一方で「滞在価値を室内に集中させやすい時期」とも言えます。価格を下げて「とりあえず埋める」より、雨を前提にしたコンテンツを用意すれば、客単価アップや口コミ獲得も狙えます。
具体的には、次のような設計が考えられます。
-
雨音を楽しむ「こもりステイ」プラン
大画面プロジェクターやサブスク動画サービスを整備し、コーヒー器具やティーセット、地元スイーツとのセット販売を組み合わせる。 -
子連れ向け「雨の日でも退屈しない貸別荘」
玩具・ボードゲーム・室内遊具を充実させ、キッチン設備を整え「親子クッキング」を提案する。 -
クリエイター向け「雨音ワーケーション」
デスク・チェア・照明など作業環境を強化し、長期滞在割引と平日連泊特典を組み合わせる。
観光庁の調査では、国内宿泊旅行の過ごし方として「宿泊施設でのんびり過ごす」「温泉・入浴を楽しむ」といったニーズも一定数あります(観光庁『旅行・観光消費動向調査』)。必ずしも「外で観光しなければ旅行ではない」わけではありません。雨の時期こそ、「あえて何もしない贅沢」「こもる楽しさ」をテーマにしたコンセプトを組み立てると、他施設との差別化が進みます。
OTAのプラン名やトップ画像でも、次のような表現を意識すると伝わりやすくなります。
- 「雨音をBGMに映画三昧」
- 「雨でも楽しめる○○セット付き」
天候をあえて言語化して打ち出せば、「雨予報でも行きたくなる宿」として選ばれやすくなります。
OTAに頼らない直集客・ファン化でリピーターを育てる
閑散期の収益最大化には、「一見さんをひたすら集める」だけでなく、「季節ごとの魅力を理解してくれるファン」を増やす視点も欠かせません。
前述のLDKプロジェクトの事例でも、冬の琵琶湖で高稼働を実現した背景として「OTAに頼らない直集客」が挙げられています(LDKプロジェクト『【実績公開】真冬の琵琶湖で稼働率79%。サウナ付き貸別荘の“寒さを武器にする”集客戦略』)。
同noteでは、次のような取り組みを通じてファンを育てたと説明しています。
- InstagramやXで「冬のサウナ・焚き火・湖畔の朝焼け」といったシーンを継続的に発信
- フォロワーに対して、公式サイト限定プランや先行予約情報を案内
これにより、「この施設の冬を体験したい」というファン層を育て、OTA手数料を抑えつつ高稼働・高単価を維持したとされています(前掲LDKプロジェクトnote)。
同じ方向性で、次のような工夫も有効です。
- 季節ごとの過ごし方をまとめた「マガジン」やブログを公式サイトに掲載
- メールマガジンやLINEで「○月の予約が取りやすい日」「季節限定プランの先行案内」を配信
- リピーターには「閑散期こそお得に・静かに楽しめる」ことを明確に伝える
観光庁のデータでは、訪日外国人の約4割が「日本への再訪意向あり」と回答しています(観光庁『訪日外国人消費動向調査』)。リピーターを前提にしたコミュニケーションには十分なポテンシャルがあります。
閑散期は価格が下がりやすい分、「今が狙い目」「人が少なくてゆっくりできる」といったメッセージも合わせて伝えたいところです。「安いから仕方なく」ではなく「この時期だから行きたい」という動機付けにつながります。
物件の強みを季節限定コンテンツに変え、その価値を理解してくれるファン層を直集客で育てていきましょう。この二段構えができれば、閑散期でも稼働率と客単価を両立させ、年間の収益を安定的に伸ばしやすくなります。
閑散期を「仕込み期間」に変える:繁忙期に向けた準備戦略

民泊は季節変動が大きく、閑散期の売上減に悩む事業者は多くなります。ただ一方で、「閑散期がほとんど存在しない」状態を作れている事例もあります。
観光庁の宿泊旅行統計によると、全国の宿泊施設の客室稼働率は月による差が大きいものの、上位施設は通年で70〜80%台を維持しているとされます(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。単に季節のせいだけで低稼働が決まるわけではないと分かります。
ここでは閑散期を「売上が落ちる時期」ではなく「繁忙期に備えて投資する時期」と捉え、収益最大化につながる具体的な仕込み方を整理します。
閑散期にレビュー対策・写真撮影・設備改善を済ませる
まず取り組みたいのが、レビュー・写真・設備といった商品力の底上げです。
Airbnbが公表している運営ガイドラインでは、高評価レビューを得るための要素として次の点を挙げています(Airbnb Help Center「スーパーホストになるには」)。
- 清潔さ
- 正確な掲載情報
- ホストとのコミュニケーション
- チェックインのしやすさ
これらは日頃から意識する必要がありますが、とくに手間のかかる改善は時間に余裕のある閑散期に一気に進めたいところです。
具体的なタスクとしては、次のようなものが挙げられます。
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レビュー分析
直近半年〜1年分のレビューをエクセル等に抜き出し、「不満点」「改善要望」「高評価ポイント」を分類する。 -
写真撮影
プロカメラマンによる撮影や、天候の良い日に撮り直しを行う。 -
設備改善
レビューで繰り返し指摘されている箇所(ベッドの寝心地、Wi-Fi速度、キッチン用具の不足など)を優先して投資する。
Booking.comは、自社のデータ分析の結果として「写真の枚数と質が予約数に大きな影響を与える」と繰り返し発信しています。宿泊施設向け資料で、「客室だけでなく、周辺環境やアメニティの写真も充実させるべき」と推奨しています(Booking.com Partner Hub)。こうした一次情報からも、写真と設備クオリティが予約率に直結していると分かります。
閑散期は日々のオペレーションが落ち着きます。客室の大きなレイアウト変更や、壁紙・家具の入れ替えなども実行しやすくなります。短期的な売上だけ見ると投資をためらいがちです。ただ繁忙期に「見せ方」と「中身」の両方を整えておけば、検索順位の改善・クリック率の向上・コンバージョン率の上昇が同時に起こり、年間収益で十分に回収できるケースが多くなります。
繁忙期の早期予約を閑散期中に獲得するキャンペーン設計
次に重要なのが、「繁忙期の売上を閑散期のうちに前倒しで獲得する」考え方です。
観光庁の「訪日外国人消費動向調査」では、訪日客の予約タイミングについて「1か月以上前に予約する」が約7割を占めるとされています(観光庁『訪日外国人消費動向調査』2023年)。インバウンドを狙う場合、早期予約の取り込みは欠かせません。
閑散期に実行できる施策として、例えば次のようなものがあります。
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早期予約割引
繁忙期(例:GW・夏休み・紅葉シーズン)の予約を○か月前までに行ったゲストに、5〜10%ほどのディスカウントを適用する。 -
直予約限定プラン
公式サイトやLINEからの予約に限定し、「早期予約でレイトチェックアウト無料」「BBQセット半額」など値下げ以外の特典を付ける。 -
リピーター先行案内
前年度の宿泊ゲストにメール配信し、「○月△日から繁忙期の予約開始」「リピーターは1週間先行予約可能」といった優遇を設計する。
ホテル・旅館向けコンサルティングを行うアビリブ社は、冬の閑散期対策として卒業旅行・学生旅行をターゲットにした早期販売や、特典付きの長期滞在プランを提案しています。
早めの時期から、明確なターゲットに対して企画を打ち出すこと
が稼働改善に有効と述べています(株式会社アビリブ「冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。民泊でも同様に、「誰に向けたどんな繁忙期プランか」を早めに決め、OTA・公式サイト・SNSで一貫して訴求することが有効です。
このとき注意したいのは、安売りに寄り過ぎないことです。閑散期に価格を大きく下げると、その印象のまま繁忙期も「もっと安くならないか」と値引き要請が来ることがあります。
早期予約特典は、できるだけ付加価値で設計したいところです。アーリーチェックイン、駐車場無料、地元の飲食店クーポンなどで工夫すれば、平均客単価を守りながら稼働率を高めやすくなります。
民泊×マンスリー賃貸のハイブリッド運営で180日制限を逆手に取る
住宅宿泊事業(民泊新法)には、年間180日という営業日数制限があります。多くの場合「収益の上限を押し下げる規制」として語られます。ただ、この制限を前提に「残りの180日をどう使うか」を設計すれば、通年の稼働と収益性を高めることも可能です。
PR TIMESに掲載されたCOMPASS STAYの事例では、「民泊×マンスリー賃貸」のハイブリッド運営により、繁忙期の稼働率90%超、さらに「閑散期のない高稼働」を実現していると紹介されています(COMPASS STAY プレスリリース、PR TIMES)。
同社は、民泊として営業できない期間をマンスリーや中期滞在で埋めることで、季節変動と180日制限の両方をカバーしていると説明しています。
このアプローチを民泊運営に落とし込むと、次のような設計が考えられます。
- 年間カレンダーを作成し、「民泊運用に充てる180日」と「マンスリー・中期賃貸に充てる期間」を大枠で決める。
- 民泊需要が高い期間(観光ハイシーズン・連休など)は短期宿泊を優先する。
- 残りの期間は30日〜数か月単位のマンスリー賃貸として募集し、家賃収入でベースとなるキャッシュフローを確保する。
観光庁の資料でも、住宅宿泊事業者がマンスリー賃貸と組み合わせて運用する事例が紹介されています。
地域の需要に応じて柔軟に活用することで、空き家・空き室の有効利用につながる
と評価されています(観光庁「住宅宿泊事業の実態等に関する調査」)。規制を前提にしながら用途を切り替えることで、物件の稼働を最大化する発想です。
ハイブリッド運営を検討する際には、次のポイントを押さえます。
-
マンスリー募集のチャネル
不動産会社経由のサブリースだけでなく、マンスリー専門サイトや自社サイトでの募集も比較する。 -
賃料設定
民泊としての想定売上とのバランスを見ながら、「最低限確保したい月額」を決める。 -
清掃・現場オペレーション
退去時と入居前の清掃・リネン交換の段取りを、民泊清掃チームと共有する。
こうした仕組みを、暇な時期の場当たり的な穴埋めではなく、年間計画として閑散期のうちに設計しておくと運営が安定します。あらかじめマンスリー用途の備品や契約書式、募集ページを用意しておけば、需要の波に合わせてスムーズに切り替えられます。
その結果、「空室リスクの少ない物件」として金融機関や投資家からの評価も高まりやすくなります。
閑散期を仕込み期間として活用し、商品力の改善・繁忙期の先行販売・用途切り替えの仕組みづくりを進めましょう。季節要因と制度制約の両方を味方につけやすくなります。こうした準備を整えておけば、繁忙期の予約が自然と積み上がり、年間を通じたキャッシュフローも安定しやすくなります。
年間スケジュールで見る民泊の需要波と月別対策マップ

月別需要カレンダー:繁忙期・閑散期・準閑散期の区分け
民泊は、年間平均より月別の波を前提に計画を組んだほうが収益管理をしやすくなります。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」では、延べ宿泊者数は月ごとの変動が大きいとされています。8月・10月などにピークがある一方で、1〜2月・6月は少なめです(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。
多くの民泊にも概ね共通するため、日本全体の標準カレンダーとして次のように整理できます。
- 繁忙期の代表例
- 3月中旬〜4月:春休み・卒業旅行・花見シーズン
- 5月上旬:ゴールデンウィーク
- 7月下旬〜8月:夏休み・お盆
- 10月〜11月下旬:秋の行楽・紅葉シーズン
- 明確な閑散期の代表例
- 1月中旬〜2月:正月明け〜年度末前で旅行意欲が落ちる時期
- 6月:梅雨入りで観光需要が低下しやすい月
- 9月中旬〜10月初旬:大型連休と連休の狭間で平日稼働が落ちやすい
- 準閑散期(平日が落ちるが、週末・イベントで埋まる時期)
- 1月上旬:三が日〜成人の日前後
- 2月下旬〜3月上旬:受験・卒業旅行前の谷間
- 5月中旬〜6月上旬:GW後の反動減
- 9月上旬:夏休み明け〜シルバーウィーク前
ホテル・旅館向けコンサルティング会社アビリブも、冬の1〜2月や梅雨期を「冬の閑散期」「梅雨による閑散期」と位置づけています。学生旅行や地元客をターゲットにしたプラン造成を推奨しています(アビリブ「【ホテル・旅館】卒業旅行・学生旅行シーズン!冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。
同じ発想を民泊にも当てはめ、閑散期を「価格で消耗する月」ではなく「ターゲットと商品を切り替えて取りにいく月」と定義し直すと、年間収益の設計がしやすくなります。
Googleトレンドや前年データで需要を先読みする方法
全国の一般的なパターンを押さえたうえで、実務として必要なのは「自分の物件エリアでは、どのタイミングでどれくらい需要が動くか」を数字で把握することです。
このために使える基本ツールが、次の二つです。
- Googleトレンド
- 自施設の前年予約データ
Googleが公開している「Googleトレンド」は、任意のキーワードについて、検索ボリュームの推移を0〜100の指数で確認できる無料サービスです。場所と期間を指定し、「民泊 ○○(エリア名)」「ホテル ○○」「旅行 ○○」など複数キーワードを比較しながら見ると、そのエリアの旅行ニーズが高まるタイミングをおおまかに把握できます。
Google自身も「トピックや検索語句の人気度を、時間の経過とともに比較するためのツール」として位置づけており、マーケティング用途の利用を想定しています(Google Trends ヘルプ)。
民泊の収益管理の一次情報として最も有用なのは、「実際に自施設に入った予約データ」です。観光庁の統計は全国平均を示しますが、個々の民泊にとっての売上は、物件タイプ・立地・チャネル構成によって大きく異なります。
タビルモの民泊稼働率解説でも、「結局、自分の施設は何%を目指せばいいのか」という問いに対し、まず自施設の稼働率を計算し、前年比や同月比で推移を追う重要性が強調されています(タビルモ「民泊の稼働率はどれくらい?平均・計算方法・上げる方法を解説」)。
実務的には、次の手順で「月別対策マップ」を作成すると、閑散期の集客対策を設計しやすくなります。
-
OTA別に、月ごとの予約件数・売上・平均単価をエクスポートする
Airbnb、Booking.com、自社サイトなどからCSVを出力し、月ごとに集計する。 -
Googleトレンドで、同じ月の検索指数の推移を確認する
予約数が減っている月でも、検索ニーズは増えているのか、それとも検索自体が落ちているのかを区別する。 -
「需要があるのに取れていない月」と「そもそも需要が薄い月」を分ける
前者は、露出や価格・写真・レビューなどに改善余地が大きい。
後者は、ターゲット変更(ワーケーション・長期滞在・地元客向け)やマンスリー切り替えを検討する。 -
各月に“優先施策”を1つ書き込む
例:1月=「学生向け長期割プラン強化」、6月=「ワーケーション+自炊需要向けの設備訴求」など。
このように、統計(観光庁)・検索トレンド(Google)・自施設データ(OTA・自社予約)という三つの一次情報を組み合わせると、なんとなく閑散期だから値下げではなく、「どの月に、どの集客対策で単価と稼働を取りにいくか」を設計しやすくなります。
地域別(都市部・観光地・リゾート)の需要パターンの違い
同じ日本でも、東京・大阪のような都市部と、京都・金沢などの観光都市、沖縄・北海道のようなリゾートでは、需要の波形が異なります。そのため、「全国平均の需要カレンダー」にエリア特性を上乗せして考える必要があります。
-
都市部(東京・大阪など)
観光庁の宿泊旅行統計では、ビジネス需要を多く含む都市圏の客室稼働率は、地方より年間を通じて高い水準にあるとされています(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。民泊でも、展示会・ライブ・スポーツイベントなど“点の需要”が年間を通して発生しやすく、完全な真っ暗な月は少ない傾向があります。その代わり、イベントカレンダーを押さえていないと、週末の高需要日を取り逃しやすくなります。
→ 対策マップ例:閑散期でも、イベント開催日をGoogle検索や自治体のイベントカレンダーで拾い、ピンポイントで料金を上げる・最低滞在日数を調整する。 -
観光都市(京都・金沢など)
桜・紅葉など季節要因の影響が強く、3〜4月・10〜11月の繁忙期と、1〜2月・6月の閑散期の差が出やすくなります。インバウンド比率も高いため、国・地域ごとの休暇シーズンに合わせた販促が重要です。
→ 対策マップ例:1〜2月・6月は、国内の週末旅行・修学旅行・社員旅行など団体需要を取りにいくプランを用意し、閑散期の平日は長期滞在割引で埋める。 -
リゾート(沖縄・北海道など)
沖縄は夏、北海道は冬というように、明確なピークシーズンがあります。その前後の“肩シーズン”が狙い目です。観光庁の統計でも、沖縄の宿泊者数は7〜8月に大きな山を持ち、春・秋はやや低下する傾向が示されています(観光庁「宿泊旅行統計調査」地域別データ)。ただ、航空券のセールやLCC路線の就航状況によって需要が急に伸びることもあります。航空会社の運航情報も重要な一次情報になります。
→ 対策マップ例:6月・9月〜10月前半など、天候が比較的安定しているが需要が薄い月に、「オフピーク割」「長期ステイ×レンタカーセット」などコストパフォーマンス重視のプランを打ち出す。
このように、全国統計(観光庁)と自施設データ、さらにGoogleトレンドやイベント・航空ダイヤ情報といった一次情報を組み合わせれば、「エリア特性込みの年間スケジュール」を描けます。そのうえで、次のステップとして「閑散期にどの集客施策へリソースを振り切るか」を決めると、年間の収益最大化につながりやすくなります。
まとめ:閑散期対策は「値下げ」ではなく「戦略の多層化」で乗り越える
閑散期の集客を考える際、単純な値下げで乗り切ろうとすると、稼働は一時的に上がっても客単価の下落やブランド毀損を招きやすくなります。
観光庁の「宿泊旅行統計調査」では、エリアごと・月ごとに明確な繁閑の波が出ています。例えば沖縄は7〜8月に宿泊者数のピークがあり春・秋は落ち込み、北海道は冬に山が来るといった季節変動が示されています(観光庁「宿泊旅行統計調査」地域別・月別データ)。
この波自体を消すことはできません。値段だけで対抗するのではなく、露出・価格設計・ターゲット・コンテンツ・仕込みの5層で戦略を組み合わせる必要があります。それが収益最大化に向けた現実的なアプローチだと言えます。
一棟貸し専門OTA「タビルモ」の民泊稼働率解説でも、次のように指摘されています(タビルモ公式メディア「民泊の稼働率はどれくらい?平均・計算方法・上げる方法を解説」)。
稼働率が低いとき、いきなり値下げに走るのではなく、そもそも検索結果に出ているか・一覧からクリックされているか・施設ページで予約につながっているかを順番に確認することが重要
露出やページ改善といった上流のボトルネックを放置したまま価格だけ変えても、本来取れたはずの売上を取りこぼしかねません。
また、ホテル・旅館向けに冬の閑散期対策を提案しているアビリブのコラムでは次のように述べられています(株式会社アビリブ「【ホテル・旅館】卒業旅行・学生旅行シーズン!冬の閑散期対策に有効な取り組み」)。
卒業旅行・学生旅行、ワーケーション、長期滞在など、シーズンに合わせてターゲットを細かく設定し、専用プランやキャンペーンを打ち出すことが有効
この考え方は民泊にもそのまま応用できます。
“誰にとってのベストシーズンか”をずらしていくことで、カレンダー上の閑散期を別の層のピークに変えていく
というイメージを持つと、戦略が立てやすくなります。
閑散期対策の優先順位チェックリスト(露出→価格→ターゲット→コンテンツ)
実務レベルでの優先順位は、次の4ステップで確認すると整理しやすくなります。
-
露出:まず「見つけてもらえているか」を確認する
OTA・Airbnbでの掲載状況を確認し、検索結果で何ページ目に出ているか、マップ検索で表示されているかを把握します。
観光庁の統計では、施設供給は増える一方で平均客室稼働率は常に100%を大きく下回っています(観光庁「宿泊旅行統計調査」全体値)。ユーザーの選択肢が増えるなかで埋もれないよう、写真枚数・説明文・設備情報をプラットフォーム推奨水準まで整えることが前提になります。 -
価格:次に「取りこぼしがない価格設計」かを確認する
近隣相場と比較し、周辺施設と比べて高すぎないか、逆に安すぎて不安を与えていないかを確認します。タビルモの稼働率解説でも、「料金・在庫の設定は適切か」がチェックポイントとして挙げられています。
閑散期専用の価格レンジも用意し、ピーク期と同じ価格帯のままにしないよう注意します。早期予約割・連泊割・オフピーク割など、滞在日数や予約タイミングで単価を調整する設計にすれば、底値競争を避けられます。 -
ターゲット:閑散期に合う顧客層を明確にする
国内の平日需要(テレワーク・ワーケーション・出張族・リピーターなど)や、観光庁が公表する訪日外国人の国別・月別動向(観光庁「訪日外国人消費動向調査」「訪日外国人統計」)を確認します。どの月にどの国・どの層が動いているかを把握します。
例えば、韓国・台湾・香港など近距離アジアは、航空券セールや祝日カレンダーの影響で、日本側の閑散期にも動きが出ることがあります。各国の祝日カレンダーや航空会社のセール情報も確認すると、自分のエリアの「隠れピーク」を見つけやすくなります。 -
コンテンツ:ターゲットが「泊まりたくなる理由」を用意する
アビリブのコラムが指摘するように、卒業旅行向けの特典、学生割引、ワーケーション向けの高速Wi-Fi・デスク環境案内など、ターゲット別のコンテンツ設計が重要です。
自施設の周辺イベント情報や自治体の観光キャンペーン(自治体公式サイトや観光協会サイト)を定期的に確認し、「イベント×滞在プラン」としてまとめて打ち出せば、単なる安い宿ではなく、「この時期だからこそ泊まりたい宿」として選ばれやすくなります。
この4ステップを毎シーズン見直し、「露出→価格→ターゲット→コンテンツ」の順にボトルネックを潰していくことが、閑散期対策の基本フレームになります。
収益の波を平準化するために今日からできる3つのアクション
最後に、「民泊 閑散期 集客 対策」で情報収集している段階から、すぐに着手できるアクションを3つに絞って整理します。
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観光庁データと自施設カレンダーを重ねて“本当の閑散期”を特定する
観光庁「宿泊旅行統計調査」の地域別・月別宿泊者数グラフと、自施設の過去1年の稼働率を並べて見ます。
エリア全体が落ちている月と、自分だけ落ちている月を切り分けることで、値下げではなく戦略のズレが原因の月を特定しやすくなります。 -
主要OTA・Airbnbの掲載情報を3か所だけ改善する
- 1枚目の写真:タビルモの一次情報でも、一覧からのクリック率が稼働率に直結するとされています。トップ画像の刷新は最優先で取り組む価値があります。
- タイトルとキャッチコピー:閑散期に狙いたいターゲット(例:ワーケーション・ファミリー・長期滞在)を想定し、キーワードを盛り込みます。
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日本語+英語の説明文の追記:訪日需要を取り込みたい場合、観光庁のインバウンド統計で伸びている国・地域を確認し、その言語圏のゲストが検索しそうなワードも意識して盛り込みます。
-
次の閑散期に向けた「仕込みリスト」を作る
設備投資や内装アップデート、写真撮影、周辺店舗との提携など、「繁忙期には手をつけにくいが、やれば単価アップにつながること」を書き出します。
ゲストハウス開業ノウハウをまとめた専門メディアでも、オフシーズンを設備改善・コンテンツ作り・口コミ獲得の期間として使うことで、翌シーズンの売上が変わると繰り返し指摘されています(ローカルマーケティングパートナーズ編集部「ゲストハウスの開業|簡易宿所と民泊新法の選び方・開業資金・許認可・集客」)。民泊も同様で、閑散期を準備期間として意図的に位置づける発想が、長期的な収益最大化には欠かせません。
閑散期は、どうしても心理的には「売上が落ちる怖い時期」に映りやすくなります。ただ、観光庁やOTA各社が公表する一次データを冷静に見れば、どのエリア・どの業態でも一定の波があると分かります。
その前提に立ち、露出・価格・ターゲット・コンテンツ・仕込みの5層を組み合わせていきましょう。そうすれば、値下げ一択から抜け出し、年間を通じて収益の波をならすことも十分に可能です。
自施設のカレンダーと各種公的データを開き、「いつ・どの層に・何を打ち出すか」を1年間分ラフに書き出してみてください。これが収益最大化に向けた最初の一歩になります。
まとめ
民泊の閑散期対策は、「とりあえず値下げ」ではなく、露出・価格・ターゲット・コンテンツを多層的に設計することが重要です。本記事で解説したように、複数OTAへの掲載強化とページ改善で母数を増やし、ダイナミックプライシングと連泊・長期滞在プランで収益性を確保しつつ、ワーケーションや法人・学生旅行、インバウンドなどニッチ需要を取り込めば、稼働率の底上げが期待できます。
さらに、閑散期をレビュー改善や写真撮影、設備投資、繁忙期向けの早期予約獲得の「仕込み期間」と位置づけ、年間カレンダーに沿って計画的に動けば、収益の波を平準化しやすくなります。まずは、自施設の現状をチェックリストで整理し、今日できる小さな施策から優先的に実行していきましょう。それが、閑散期でもぶれない民泊経営への第一歩になります。
よくある質問(FAQ)

Q1. 民泊の閑散期は、まず何から対策すべきですか?
A. いきなり値下げではなく、次の順番で見直すのがおすすめです。
- 露出状況の確認
- Airbnb・Booking.com などで、自施設が検索結果の何ページ目に出ているかを確認
- 1枚目の写真・タイトル・説明文を見直し、「誰向けの宿か」を明確にする
- 価格設定の妥当性
- 近隣の民泊・ホテルとの料金を比較し、割高・割安になりすぎていないかチェック
- 連泊割・早期予約割など、「単純な値下げ以外」の調整余地がないか確認
- ターゲットの再定義
- 閑散期に動きやすい層(ワーケーション・長期出張・学生旅行・インバウンドなど)を一つ決めて、その層向けにプランや説明文を整える
まずは「露出」と「見せ方」の改善で取りこぼしを減らし、そのうえで価格やターゲットを調整すると、無駄な値下げを避けつつ稼働率を底上げしやすくなります。
Q2. 閑散期にどこまで値下げしても大丈夫?損しないラインの考え方は?
A. 「赤字にならない最低価格」と「RevPAR(1室あたり売上)」の2つを基準に決めます。
- 赤字にならない最低価格を計算
- 1泊あたりで必ずかかる費用(清掃費の按分・リネン・消耗品・光熱費・OTA手数料)を洗い出す
- これに、最低限確保したい利益を少し上乗せした額を「フロア価格(下限)」とする
- RevPARが下がらないかをチェック
- 値下げ前:ADR(平均客室単価)×稼働率
- 値下げ後:新しい単価 × 予想稼働率
- 値下げしても稼働がそこまで伸びず、RevPARが下がるなら、その値下げは「損」です
「とりあえず20%引き」ではなく、最低価格ラインを決めたうえで、5〜10%刻みでテストし、RevPARが最大になる価格帯を探るのが、安全かつ効率的なやり方です。
Q3. 閑散期でも予約を切らさないために、どのOTA(予約サイト)に出せばいいですか?
A. 1サイト依存はリスクが高いので、役割を分けて「3レイヤー」で考えるのが現実的です。
- グローバルOTA(母数を稼ぐ)
- Airbnb、Booking.com など
- 国内外の旅行者に広くリーチし、検索母数そのものを確保
- 国内OTA(日本人の定番ルートを押さえる)
- じゃらんnet、楽天トラベル等(簡易宿所として条件を満たせば)
- ファミリー・車移動・ビジネス利用を取り込みやすい
- 一棟貸し・民泊専門OTA(成約率の高いニッチ)
- タビルモ等
- 「貸別荘・一棟貸し」を探しているユーザーだけに絞って訴求できる
この3層を組み合わせつつ、将来的には自社サイト・SNSからの直予約も育てていくと、手数料を抑えつつ閑散期の底抜けを防ぎやすくなります。
Q4. 閑散期に狙いやすいターゲット客層はどんな人たちですか?
A. 季節要因の影響が小さい、次の4タイプを意識すると安定しやすくなります。
- ワーケーション・テレワーク層
- 平日・長期滞在が多く、閑散期の空室を埋めやすい
- 高速Wi-Fi・デスク・椅子・電源など「仕事環境」の明示が重要
- 法人・ビジネス利用(出張・合宿・研修)
- 平日中心で季節変動が小さい
- 請求書払い・領収書・会議スペース有無をわかりやすく
- 学生・卒業旅行(2〜3月がピーク)
- 2〜4人グループが多く、「1人あたり料金」表示が響きやすい
- SNS映え・BBQ・ゲームなど「思い出づくり」要素があると強い
- インバウンド(訪日外国人)
- 日本人の閑散期(1〜2月・6月)に動く国・地域もある
- 英語説明文・セルフチェックイン・周辺案内の多言語化で安心感を提供
物件の立地・設備に合う層を1〜2つ選び、その層に寄せたプラン名・写真・説明文を用意するのが、閑散期集客の近道です。
Q5. 梅雨や台風シーズンのように天候が悪い時期は、どう集客すればいいですか?
A. 「雨だと困る宿」から「雨でも楽しめる宿」にコンセプトを切り替えるのがポイントです。
具体的には:
- 室内コンテンツを充実させる
- プロジェクター・サブスク動画・ボードゲーム・子ども向けおもちゃ
- コーヒー器具・ホットプレート・お鍋セットなど「こもり料理」向け備品
- 雨前提のプラン名で訴求
- 例:「雨音をBGMに映画三昧ステイ」「雨の日こそ楽しむボードゲーム貸別荘」
- OTAのタイトル・説明文に「雨でも」「室内で」「こもりステイ」などのワードを入れる
- キャンセルポリシーと価格のバランス調整
- 台風シーズンは、遠方ゲストには柔軟なキャンセル規定+やや高め単価
- 近隣在住者向けに「直前割」を用意し、直前キャンセルの穴を埋める
天候リスクは避けられませんが、「雨でも楽しめる理由」を言語化して見せることで、天気に左右されにくい予約を増やせます。
Q6. 閑散期を“仕込み期間”として有効活用するには、何をしておくべきですか?
A. 売上を追いすぎて動きづらい繁忙期にはできない作業を、まとめて進めるのがポイントです。
代表的な仕込みは次の3つです。
- レビュー・設備の改善
- 過去半年〜1年分のレビューを洗い出し、不満点(清潔さ・寝具・Wi-Fiなど)を優先的に改善
- その結果をOTA説明文に反映(例:「2026年◯月に寝具を一新しました」など)
- 写真・ページの刷新
- プロ撮影や、晴れた日の再撮影でトップ画像を刷新
- 季節ごとの過ごし方(冬のサウナ、夏のBBQ、雨の日の映画鑑賞など)を写真で見せる
- 年間カレンダーと価格戦略の設計
- 観光庁の宿泊統計と自施設の過去データを突き合わせ、月ごとの「攻め方」を決める
- 繁忙期の早期予約割・閑散期の連泊割・長期滞在プランなどを、この時期に設計
「売れないから何もしない」ではなく、「売れるための準備をする時期」と割り切ることで、翌シーズン以降の単価・稼働率を底上げしやすくなります。
Q7. 民泊新法の年間180日制限がある場合、閑散期はどう活用するのが得策ですか?
A. 「民泊として売りにくい時期」を、マンスリーや中期賃貸に切り替えるハイブリッド運営が有効です。
考え方は次の通りです。
- 年間で“民泊に充てる180日”をざっくり決める
- 観光需要が高い月(長期休暇・連休・イベント期)は民泊用に確保
- 残りの日数はマンスリー・中期滞在で埋める
- 30日〜数か月のマンスリーとして募集し、ベースとなる家賃収入を確保
- オフシーズンを「安定収入期間」に変えるイメージ
- 募集チャネルとオペレーションを整える
- マンスリー専用サイトや不動産会社との連携、自社サイトでの長期滞在プラン
- 退去〜入居の清掃・点検フローを民泊オペレーションと統合
こうした「用途切り替え」を、閑散期のうちに設計しておくことで、180日制限と季節変動の両方を味方につけ、通年のキャッシュフローを安定化させることができます。


